
建設業界が活況の裏で進む人手不足は今後、死亡者をさらに増やす恐れがある。昨年は夏場に墜落事故が続発。まるで安全意識が抜け落ちたかのような死亡事故が後を絶たない。現場における安全対策の抜本的な見直しが必要とされている。
*掲載予定記事のタイトル・内容は予告なく変更することがあります。ご了承ください。
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建設業界が活況の裏で進む人手不足は今後、死亡者をさらに増やす恐れがある。昨年は夏場に墜落事故が続発。まるで安全意識が抜け落ちたかのような死亡事故が後を絶たない。現場における安全対策の抜本的な見直しが必要とされている。
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日本の建設業における死亡者数は世界的に見ても少ない方だが、まだ上には上がいる。死亡者率が日本の5分の1程度の英国だ。1994年に制定した「規則」が死亡者減の後押しになっている。
建設業における死亡災害者数の減少に向けて、注目されている動きが複数ある。1つ目が、建機と人との「共存」だ。建機を隔離しづらい工事現場では長らく、人の注意で安全を担保するしか方法がなかった。
VR(仮想現実)が、建設業の安全衛生教育の常識を変えつつある。VRというと、3次元の臨場感あふれる映像を見るだけというイメージが強いが、最近ではVRを使った「体感型」のシステムが主流になっている。
2017年2月、愛知県西三河農林水産事務所が発注した農業用水管橋の塗り替え工事で発生した死亡事故。直径わずか1mの鋼管内面を塗装していた作業員3人が有機溶剤の中毒で倒れ、そのうち1人が死亡した。
建設現場では、移動式クレーンによる吊り荷走行や1点吊りは原則的に禁止されている。大阪府吹田市の公道で昨年5月に施工していた下水管の新設工事では、その両方を実施したことがきっかけで、死亡事故にまで発展した。
岐阜県内で中日本高速道路会社が整備する東海北陸自動車道路の4車線化に伴う橋梁の建設工事で昨年9月、作業員が高さ14mの足場から墜落して死亡する事故が発生した。現場ではプレストレスト・コンクリート(PC)桁の架設が終わり、支保工を解体していた。
民間事業者が開発する沖縄県の駐車場造成工事で、2017年8月に起こった石積み擁壁の崩壊事故。3人が死傷し、また事故現場の異様な光景も相まって全国紙が報道して注目された。
戸田建設が施工していた「天竜川水系穴沢砂防堰堤管理用道路トンネル工事」で、予想だにしない死亡事故が発生したのは2017年3月のこと。事故現場は、トンネル工事で危険性が高いとされる切り羽(トンネルの掘削面)付近ではなく、トンネル坑外に設置したバッチャープラントだ。
熊本県天草市で2017年5月、国道バイパスの拡幅工事中に発生した死亡事故。元請け建設会社の技術者が、崖地で作業中に足場の外側から約16m下に墜落し、頭部を強く打って即死した。
新名神高速道路の建設現場以外でも、作業員などの墜落事故は相次いでいる。報道で注目を集めた事故の1つが、2017年8月に東京都内のビルの建設現場で3人が死亡した重大災害だ。
特に危機感を強めているのは、西日本高速道路会社だろう。2016年4月の有馬川橋の落橋事故を皮切りに、新名神の建設現場で17年までに4件もの死亡事故が発生した。