日本人設計者が中国メーカーと一緒にものづくりをすると、不良品発生などのトラブルが起きてしまうことがあります。しかし、その本当の原因は中国に無理解な日本人設計者にあるかもしれません。この連載では、駐在の4年半を含めた7年間、中国でのものづくりに関わった私が失敗経験を紹介しつつ、その理由を分かりやすく解き明かします。

 今回は、中国の部品メーカーで発生しがちな不良を例に挙げながら、それを回避するために日本人設計者が求められる取り組みを紹介します。取り組みとしては、量産開始前にすべきことと、量産開始後にすべきことが両方、それぞれあります。

中国で発生しがちな2つの不良

 私が経験した中で、比較的多かった不良を2つ紹介しましょう。どちらの不良も私の日本での設計経験では、一度も発生しませんでした。しかし、これらのような不良の存在を知らないままでは、中国でものづくりをする際に見過ごしてしまう危険があるのです。

 まず、プレス部品のダボ部の根元にクラックが入るという不良です(図1)。クラックが広がってダボ部が脱落してしまうと、導電物として製品の内部に混入し、基板をショートさせてしまう可能性があり非常に危険です。

図1 プレス部品のダボ部
クラックの入った不良品(a)と綺麗なダボ(b)。(出所:ロジ)
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 もう1つが、樹脂部品と樹脂部品、もしくは樹脂部品と板金部品などを接合する際、ピン状に凸になった樹脂の先端部に溶着機のコテを当ててドーム状に広げる加工の際に発生する不良です(図2)。片方の部品から凸に作製されたピンを、もう一方の部品の貫通穴に通し、その分の先端部をドーム形状に溶かしてリベット接合のように固定する加工です。私はこの加工を中国の部品メーカーで何度も行いましたが、ピンの先端部が綺麗なドーム状に加工されたという記憶がありません。形状の不良があると強度的な問題でドーム部が脱落してしまう可能性があるのです。

図2 接合するピン先端部の加工不良
本来はきれいなドーム状になっているべき(a)。ところが、先端部を加工する溶着機のコテの取り付け方が悪いときれいなドーム状にはならない(b、c)。(出所:ロジ)
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 これらの不良が発生する原因の1つは、ダボ部やドーム部の詳細な形状や寸法を図面に記載していないことが挙げられます。本コラムの第7回(2019年8月号)でお伝えした「機能すれば問題ない」という中国人の国民性によって、部品メーカーの担当者が持つ個別の判断基準で出来具合が決まってしまうのです。不良を発見して修正を依頼しても、修正後の出来具合のレベルに関する認識もなかなか合わず、修正完了までに長い時間を費やしがちです。

 そこで私は、以下のような対策を実施しました。プレス部品のダボについては、その根元のクラックは目視では見つけにくいため、プッシュプルゲージを用いてある一定の力でダボを裏面(凹面)から押し、脱落しないかを確認するのです。もしダボ部が脱落してしまうようなら、その場合は金型を修正します。

 ピンのドーム部の不良に関しては、先端部に当てる溶着機のコテ先の高さや曲がり(角度)を修正します。8本のピンを同時に加工する部品を担当したときは、修正が完了するまでに3日間を費やしました(図3)。プレス部品のダボ部も接合のドーム部も不良の修正には長い時間と労力が必要です。

図3 ピンの先端部を加工する溶着機
8カ所を同時に加工する。コテの脱着時や加工中にコテが曲がってしまい、先端(コテ先)の位置や傾きが変わってしまうことがある。このため、量産開始後の確認が必要だ。(出所:ロジ)
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