2018年11月、真っ赤なユニホーム姿の浜野慶一氏に初めて会った。同氏が率いるのは、金型および量産プレス加工、多品種少量の板金部品加工を手掛ける浜野製作所(本社東京)だ。東京都墨田区で1968年に創業した。同氏の第一印象はとにかく明るくエネルギッシュ。そして優しさにあふれていた。筆者は仕事柄数多くの人に会うが、これほど記憶に残る出会いはそうない。

 浜野氏は大学卒業後に精密板金メーカーで働いていたが、父の嘉彦氏が急逝する不幸に見舞われ、1993年に2代目として社長に就任した。当時は他の日本の中小企業と同様、海外とのコスト競争にさらされ業績は芳しくなかった。顧客は4社のみという、いわゆる5次、6次下請けの部品加工屋にすぎなかった。しかも、追い打ちをかけるように、2000年には近隣の火災により本社工場が全焼するという最悪の事態に遭遇し、全てを失ってしまう。

 そんな浜野製作所だが、現在の取引先は4800社に及ぶ。2018年には経済産業省の「ものづくり日本大賞」の「経済産業大臣賞」、「天皇陛下のご見学」と、単なる復活どころか異次元ともいえる進化を果たした。俗に「蹴飛ばし」と呼ばれる足踏み式のプレス機2台と従業員1人で再スタートしてから20年弱、「お客様・スタッフ・地域」への感謝の思いと、少しでもそこに還元したいとの気持ちで1つひとつ積み重ねてきた結果だ。

図1 2000年の再スタートを支えた足踏み式プレス機「蹴飛ばし」と浜野社長
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