ぺらぺらな紙に電気を流すと青いイルカが浮かび上がり、電気を止めるとただの紙に戻っていく――。大阪大学 産業科学研究所自然材料機能化研究分野准教授の古賀大尚氏は、植物由来の材料「セルロースナノファイバー(CNF)」を用いた「電子ペーパーディスプレー」を開発した。しっかりと繊維を解いたCNFは光の波長より細いため、上手く乾かすと透明なシートができる。古賀氏はCNFの透明シートに導電性を付加した「CNF透明導電シート」を用いて、軽量かつフレキシブルな電子媒体を実現した。

 紙をリノベーション――。現代の電子媒体には軽量性とフレキシブル性が求められている。「それらの性質を併せ持つ“紙”を用いて電子媒体を実現すればいいと思い立った」(古賀氏)。これは大阪大学の古賀氏が、CNFを利用する「電子ペーパーディスプレー」を開発したきっかけだ(図1)。

図1 電子ペーパーディスプレーの動作の様子
CNFを用いて、軽量かつフレキシブルな電子媒体を実現した。電極およびディスプレー表示の役割を担うCNF透明導電シートと、電解質の役割を担う白い紙で作られている。電気が流れると青いイルカが浮かび上がり、電気を止めると紙に戻る。(写真:大阪大学)
[画像のクリックで拡大表示]

 同氏が開発したディスプレーは、一般的な電子ペーパーとは異なる。通電すると物質が変色する「エレクトロクロミック(EC)」機能を利用する。まだ実用化されていないものの、各所で開発が進められている「ECディスプレー」と呼ばれるものの一種だ。

 開発したディスプレーは、電極およびディスプレー表示の役割を担うCNF透明導電シートと、イオン液体を浸み込ませた白い紙で作られている。CNF透明導電シート、イオン液体を浸み込ませた白い紙、CNF透明導電シートという3層構造だ(図2)。紙を軽く挟んで電気を流すと、CNF透明導電シートの一部が青くなる。CNF透明導電シートに含まれる導電性高分子がEC機能を担っている。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
図2 電子ペーパーディスプレーの構造
電子ペーパーディスプレーはCNF透明導電シート(電極)、白い紙(電解質)、CNF透明導電シート(電極)という3層構造をしている(a)。現代の電子媒体に求められる軽量性とフレキシブル性を紙で実現した。(b)が実際の電子ペーパーディスプレーの写真。(写真:大阪大学)

 従来のECディスプレーはその内部物質が外に漏れ出ないよう封止する必要があり、フレキシブル性を実現する上ではそれが課題となる(図3)。これに対し、大阪大学が開発した電子ペーパーディスプレーは封止材が不要なため、フレキシブル性を実現できた。さらに紙をベースにしているため、ガラスや樹脂製品を利用した場合より軽量になる。

図3 エレクトロクロミック現象を利用するディスプレーのイメージ
エレクトロクロミック(EC)層を酸化還元反応するため、液体電解質を使う。液体電解質が漏れないように封止する必要があるため、封止材を利用しなければならなかった。
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)は12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら