その後は、自動車業界向けのシステム開発プロジェクトで上流工程を手掛けたり、小さな会社のシステム運用を一手に任されたりしました。どの職場も忙しかったのですが、遅くとも夜9時には退社できていましたし、それほどつらいとは思っていませんでした。上司や同僚にも恵まれていました。

職場には満足していたのですね。なぜ、転職したのでしょう。

 「新しいことをやりたい」という思いが強くなってきたのです。入社して5年ほどたったころのことです。

 当時はスマートフォンアプリ全盛で、いろんな会社から新しいアプリがどんどん出てきていました。仕事でも新しいチャレンジはさせてもらっていましたが、企業システム開発とはスピード感が段違いです。「新しいことをやるならB2Bではなく、B2Cだ」と思いました。

 同じ頃、自分のキャリアパスについても悩んでいました。5年間働いて社内外のことがよく見えるようになって、SEとして定年まで働くのはつらいな、と感じ始めていました。顧客から依頼されたものを作るのでなく、発注側に行って自らサービスを企画したい、と思うようになりました。

 それで、転職エージェントに登録して、「ユーザー企業でB2C的な事業を手掛けているところ」を条件に転職先を探しました。IT系で新しいことをやるなら東京だろうと、人生で初めて東京に出る決意も固めました。

なぜか面接で落とされてしまう

20代後半でITエンジニアといえば、引く手あまただったのでは?

 かなり苦労しました。エージェントからはたくさんの会社を紹介されるのですが、書類選考は通っても、面接で落とされる。これまでの経験や強みを一生懸命アピールしたつもりなのに、うまくいきません。複数の会社から、不採用通知を受け取りました。

 状況を打開するきっかけになったのが、エージェントの言葉でした。面接で落とされてしまう僕を見て、「面接官が何を求めているのか、それをくみ取った上で話を組み立てましょう」とアドバイスをくれました。

 それまでの僕は、新卒採用のときと同じような感覚で、自分の思うままに自己アピールをしていました。それが相手のニーズに合っていればよいのですが、そうでなければ「うちが求めている人ではない」と思われてしまう。中途採用では、相手がどんな人材を求めているのかを理解した上で、それに応える話をする必要があったわけです。

 それに気づいてからは、面接がうまくいくようになりました。そして、人材系のサービス事業を手掛ける東京の大手企業から内定が出ました。

関西で働きながら東京の会社に転職活動。大変そうですね。

 そうなんですよ。関西の会社なら仕事が終わった後に面接に行けますが、東京となるとそうはいきません。「体調不良です」とウソの理由を伝えて有休を取っていましたが、回数が重なるとそれも限界に近づいていきます。内心ハラハラでした。

 体調を心配した上司から「大丈夫か」と電話が掛かってきたこともありました。そのときはたまたま出掛ける前で自宅にいたのでごまかせましたが、新幹線に乗っているときだったりしたら危なかった。周囲の音でバレますよね(苦笑)。

そんなピンチを乗り越えて、東京に転職を果たしたわけですね。

 はい。B2C向けのチームに配属されました。ネットサービスやアプリの開発ディレクターになりました。

まさに希望通りのお仕事ですね。

 そのはずでした。でも実際に仕事をし始めてみたら、自分には合いませんでした。