人はどんなときに、会社を辞める決心をするのか。そして、何を重視して次の職場を探しているのか。実際に転職を経験した人に、本音を明かしてもらう。今回は、パワハラから逃れるために製造業からIT業界へ転身した橋本健次さん(仮名)の例を紹介する。

今回の転職者:橋本健次さん(仮名)
経歴:1970年代生まれ。工学系の大学院を卒業後、首都圏の製造関連の企業に入社。その後、地元の四国に戻ってシステムエンジニアになる。現在は、再び上京しエンタテインメント系企業で働く。独身。
転職のきっかけ:パワハラがひどすぎた。
(出所:123RF)

今はどんなお仕事をしていますか。

 東京都内にあるエンタテインメント系企業でシステムエンジニアをしています。社内のシステム構築、サービスや機材の評価、ベンダー選定などをやっています。マイクロソフトのクラウドベースのアプリケーション「Office 365」は表も裏も詳しいです。

2回転職されたそうですね。初めの転職のきっかけは?

 パワハラ(パワーハラスメント)と、理不尽な会社の体制に「ここにいたらダメになる」と思ったからですね。本当に辞めて良かったです。

 大学と大学院は機械系でした。ぎりぎりまで就職活動していて、学んだことを生かせるし、当時住んでいたところから近所だし、と製造系の企業に入ったんですね。プレス用の機械とその周辺装置について、図面を起こす、試作する、評価する、顧客をサポートするといったことをしていました。

そこがいわゆる「ブラック企業」だった。

 うーん、会社全体で見たら、休みが全く取れないとかそういうことはなかったです。給料も同業の相場じゃなかったかな。ただ、入社直後の上司がひどすぎて……。

終わらない宿題、指導なく時間が削られるだけ

どんなパワハラだったんですか。

 過剰な量の「宿題」を出すんです。例えば、材料力学の問題を解け、というふうに。解いた結果を土日や夜に持ってこさせる。ところが、宿題を提出しても紙に大きなバツを付けるだけ。教える気が全くなくて、とにかく時間が削られる。一つ上に先輩がいたんですが、すっかり上司に染まっていて、相談もできませんでした。

新人を鍛えてやろうと思っていたのでは?

 そうではなかったですね。マネージャーに近い立場になっている今の自分から見ても、本当に単に意地悪なだけだったと断言できます。

 当時の部署では仕事でも納得できないことが多かったです。試作の段階でうまくできないことが分かっているのに、その上司はそのまま製品化に持ち込む。元々うまくいってないので、当然まともな製品になりません。なぜそんなことをするのか、訳が分からなかった。その上司が実は社長のお気に入りで、社内でもその部署は腫れ物に触れるような扱いだった、と後で知りました。

それで辞めると決めたのですか?

 いえ、あまりにつらくなってまずは異動希望を出したんです。なぜか引き留められたんですが、それでも希望が通って異動でき、しばらくは平穏な日々でした。ところが、異動先でも元上司が絡んできて……。