転職は、人生における大きな決断の一つである。人はどんなときに、会社を辞める決心をするのか。そして、何を重視して次の職場を探しているのか。実際に転職を経験した人に、本音を明かしてもらう。
 初回は、外資系IT企業でマーケティング職に従事する相田洋子さん(仮名)の転職に迫る。

今回の転職者:相田洋子さん(仮名)
経歴:1970年代生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に入社し営業やマーケティングに従事。転職を経て、30代半ばで結婚し1児の母となる。育休から復帰後も2度の転職を経験する。夫と共働きで都内に在住
転職のきっかけ:マタハラ(マタニティハラスメント)に遭ったこと
(出所:123RF)

どんなお仕事をしていますか。

 東京都内にある外資系IT企業で、マーケティング部門のマネージャーをしています。前職、前々職でも、同じく外資系IT企業でマーケティング関係の仕事をしていました。

同じ業界で転職されているわけですね。

 そうなんです。外資系IT企業では、キャリアアップを目的に転職を重ねる人もいますが、私の場合は必ずしもそうではありません。

 前々職を辞めたのは、マタハラに遭ったからです。出産後、職場復帰してすぐのことでした。

マタニティハラスメント? 何をされたんですか。

 約半年の産休・育休が終わって復帰したら、それまでやっていた仕事から外されました。ひどいですよね? 最終的には事実上の退職勧奨まで受けて、転職を決意しました。

出産後、上司の態度が急に変わったと?

 出産前から、私の産休を快く思っていない様子は何となく感じていました。業務の引き継ぎについて何度も説明したり、資料を作って共有したりしているにもかかわらず、基本的に放置。産休に入る直前になって、「きちんと引き継ぎできていない」と文句を言われました。

 私に限らず、育児中の女性に対して元々好意的ではありませんでした。子供を持つ同僚の女性の出社が遅れたことがあったのですが、社外の人も交えた打ち合わせの場で「子育てしているとしょっちゅう遅刻してくるんですよ」と言ったり。彼女の出社が遅れたのは電車の遅延だったので子育てとは無関係なのですが、当人を目の前にしてそんな言い方をしていました。

なるほど、予兆はあったわけですね。

 そうですね。出産後、職場復帰したときは、両立できるか不安にもなりましたが、同時にうれしさも感じていました。会社にいる時間は短くなりますが、以前と同じように仕事をできればと考えていたんです。

 そうしたら復帰したその日、初日ですよ。上司に突然呼び出されて。「この仕事は、もうあなたの仕事ではありません。別の人に任せます」と言われたんです。私が以前担当していた2種類の製品ラインアップのうち、片方の担当を外す、と言うのです。

それは、育児中だから業務負荷を軽減してくれたのでは?

 そう思いますよね。私も、そうなのかなと思いました。でも後任は、アルバイトとして入社したばかりの伊藤さん(仮名)。伊藤さんに、全て任せる、と言うんです。

 伊藤さんは社内の事情を全く知らないし、アルバイトとして他の業務も掛け持ちしていました。誰が見ても、伊藤さんがこなすのは無理。それなのに上司はサポート役を付けるわけでもなく、伊藤さんにポンと業務を渡したんです。

そんなことをしても……。

 そうなんです。回りません。伊藤さんは仕事をこなしきれませんでした。表だって「できない」と言える雰囲気でもなくて、伊藤さんからは毎日のように、助けを求めるメールが送られてきました。私も上司に知られないように、裏で手伝いました。