正林 真之 氏
正林国際特許商標事務所 所長・弁理士、国際パテント・マネタイザー

 医薬品の開発には莫大な投資が必要だ。その上、製造販売の承認が得られなければ販売できないという特有の事情も存在する。そのため、開発パイプライン*1の選定は容易ではない。しかも、驚くべきスピードで開発やM&A(合併や買収)が進んでいくこの分野では、少しの判断の遅れが事業を揺るがすこともあり、絶えずグローバルな視点で動向をチェックしていく必要がある。

 医薬品業界において、特許出願は特に重要だ。「IPランドスケープ」の活用は、こうした目的を達成するにはうってつけだ*2

*1 開発パイプライン 研究開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補のラインアップ)のこと。

*2 IPランドスケープは正林国際特許商標事務所の登録商標。

 今回は、京都大学特別教授の本庶佑氏のノーベル賞受賞により、さらに注目度が高まっている「がん免疫療法」を対象として、当該分野の開発状況を見ていきたい。

がん免疫療法とは?

 がん治療に関する技術開発の分野では、放射線療法と手術、薬物療法が3大治療とされてきた。これに続いて、最近は免疫システムを利用するがん免疫療法の開発熱が高まっている。がん免疫療法には図1に示すようなさまざまな療法が存在し、従来「(広義にがん免疫療法に含まれる)がん特異的抗体療法」や「がんワクチン療法」に関する技術開発が盛んに進められてきた。

図1 がん免疫各療法の分類
(出所:正林国際特許商標事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

特許出願から見たがん免疫療法の開発動向

 図2は、がん免疫療法に関連する日本特許の出願動向を示したものである。なお、医薬品に関する特許は、日本を含む先進諸国を幅広くカバーするように出願されることが多いため、日本の出願状況を俯瞰(ふかん)するだけでも、グローバルな開発状況の簡易的な把握が可能である。

 これを見ると、ランキング上位の多くは外国に属する企業または大学であることが分かる。米ジェネンテックや中外製薬を傘下に置き、がん抗体医薬の売り上げが堅調に伸びているスイスのロシュグループや、本庶氏が発見したPD-1分子を対象として開発された「オプジーボ」を販売する米ブリストル・マイヤーズスクイブなどが上位に名を連ねている。

図2 がん免疫療法の出願人別日本特許出願件数(2008年以降に出願されたもの)
(出所:正林国際特許商標事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら