正林 真之 氏
正林国際特許商標事務所 所長・弁理士、国際パテント・マネタイザー

 前回はドローンの事業展開を考える企業の事前調査について説明した。「IPランドスケープ」を実施するための「特許文献の母集団」の調査・作成についてである。今回は、作成した「特許文献の母集団」や非特許情報を利用して、IPランドスケープを実践してみよう。

 図1は、日本の「特許文献の母集団」(2008年以降の特許出願)に含まれる代表的な企業名および特許出願件数を示したマップである。

 特許出願件数が最も多い企業は、世界のドローン市場の約80%を握っていると言われる中国ディー・ジェイ・アイ(DJI)である。DJIは、ドローン市場の状況だけではなく、特許出願数からも他社を圧倒していることが分かる。特許出願が多いということは、将来の事業の基礎となる成果が多く創造されていることを示唆する。DJIは、現在のドローン市場を握っているだけではなく、将来の事業の基礎となる成果の創造についても余念がない。そのため、ドローンのトップメーカーとしての地位は当面揺るがないと思われる。

ドローン開発企業の特許出願の主な特徴

 特許出願数でDJIに続く企業は、日本のドローン専業メーカーであるプロドローン(本社名古屋市)である。プロドローンの特許出願には、クボタと組んだ農業用ドローンを対象としたもの、ロジスティック用途を対象としたものなど、多様な用途を対象としたものが含まれる。プロドローンは比較的新しいドローンメーカーだが、積極的な開発投資を行っていることがうかがえる。

図1●代表的な企業の特許出願件数
パテントマップEXZを使用。
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 その他、特徴的な内容の特許出願が見られる企業としては、三菱重工業や米Boeing(ボーイング)、東京電力が挙げられる。三菱重工業は防衛産業向けの内容の特許出願が見られる点で、ボーイングは林業用途の特許出願が見られる点で特徴的である。ドローンの代表的な用途として、農業用途が挙げられるが、近年、林業用途が検討され始めている。しかし、ボーイングの特許出願を見ると、2012年の段階でドローンの林業用途の可能性を見出していることが分かる。ボーイングは他社に先んじて、既に林業用途のドローン技術を蓄積している可能性がある。東京電力は、放射線測定用途や送電設備監視など、電力会社特有の特許出願が多い点で特徴的である。

 なお、ここで述べた特徴点は、各社の特許出願のタイトルや特許出願人のデータを見渡すだけで把握できる。分析に先立って適切な「特許文献の母集団」が作成されていれば、このようにデータを見渡すだけでも簡易的なIPランドスケープが可能となり、各社の特徴点を把握できる

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