正林 真之 氏=正林国際特許商標事務所 所長・弁理士。国際パテント・マネタイザー

 このコラムでは、さまざまな経営課題に対する解決策を提示するためのビジネスツールとして、「IPランドスケープ」の活用事例を紹介している。IPランドスケープは、大きく「ステップ1」と「ステップ2」の2つに分かれる*1

 これまでに紹介してきたIPランドスケープの解説は、ステップ2を中心に述べたものだ。IPランドスケープは、最終的にさまざまな経営課題に対する解決策を提示することを目的に行うため、ステップ2がIPランドスケープの中心であることは間違いない。しかし、ステップ2は、ステップ1において作成された「特許文献の母集団」が、調査目的に沿った適切なものであることが前提となる。「特許文献の母集団」が適切ではない場合、ステップ2においてどんなテクニックを駆使して分析しても、適切な解決策は得られない。

 今回は、ドローンの事業展開を考える企業の事前調査を題材として、ステップ1を中心に説明しよう。

*1 IPランドスケープは正林国際特許商標事務所の登録商標。

「調査対象」の特定

 今回の事例は、ドローンの事業展開を考える企業の事前調査であるため、ステップ1における「調査対象」は、ドローンということになる。

 ところで、ドローンとは何だろうか。一般には、中国ディー・ジェイ・アイ(DJI)や仏パロット(Parrot)の製品として知られるモーター駆動のマルチコプターを想像する人が多いのではないだろうか。それでは、「調査対象」をモーター駆動のマルチコプターと特定してよいだろうか。エンジン駆動のヘリコプターや無人のプロペラ飛行機は「調査対象」としなくてもよいだろうか。

 このように、ドローンのように一見簡単に思える「調査対象」であっても、一義的に特定することは容易ではない。

 ドローンの事業展開において、モーター駆動のマルチコプターを使った事業やエンジン駆動のヘリコプターを使用した事業、小型の無人飛行機を利用した事業は、いずれも競合事業になると考えたとしよう。すると、「調査対象」には、モーター駆動のマルチコプターやエンジン駆動のヘリコプター、プロペラの付いていない無人の飛行体を全て含む必要がある。

 では、モーター駆動のマルチコプターやエンジン駆動のヘリコプター、小型の無人飛行機に共通する点は何だろうか。共通点として考えられるのは、駆動源を有する無人飛行体であるという点だ。従って、「調査対象」は、「駆動源を有する無人飛行体」と特定することにする。ドローンは、技術用語としてUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と称されることもあり、駆動源を有する無人飛行体を「調査対象」として特定することは適切と言えるだろう。

 この特定によれば、以下の飛行体はいずれも「調査対象」に含まれることになる。

[画像のクリックで拡大表示]

 一般に、上の図のFig.2やFig.3がドローンと呼ばれることは少ないだろう。しかし、今回は、Fig.2やFig.3も「調査対象」に含まれる。例えば、モーター駆動のマルチコプターに特化してIPランドスケープを行いたい場合は、Fig.1のみが「調査対象」となるであろう。想定する事業に応じて、特定すべき「調査対象」は異なってくるのである。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら