正林 真之 氏
正林国際特許商標事務所 所長・弁理士、国際パテント・マネタイザー

 前回は、「IPランドスケープ」を使って新製品を予測する事例を紹介した。今回は、セルロースナノファイバー(CNF)の製造技術の応用分野を探索した事例を紹介しよう。

* IPランドスケープは正林国際特許商標事務所の登録商標。

 CNFは、木材の繊維をナノメートル(nm)サイズの太さにまで微細化した素材だ。軽量ながら強度を有し、熱変形が少ないなどの特徴を持つため、さまざまな分野で広く利用されることが期待されている。A社は、セルロースの繊維を解繊し(繊維をばらばらにし)て均一に分散する技術に長(た)けており、優れたCNF製造技術を有する。しかし、まだCNF関連製品を上市するまでに至っておらず、現在CNFの応用分野を探している状況である。

 まずは、CNF関連特許についての出願人と、性質・課題の特許出願件数マトリクスを見てみよう。件数上位出願人には、CNF自体を製造する企業からCNFを利用する企業まで含まれており、いわばバリューチェーンの上流から下流までを含んでいることが分かる。こうした、バリューチェーンの下流の顧客のニーズに着目して分析し、売れ筋になりそうな技術・製品・サービスを検討できることもIPランドスケープの醍醐味(だいごみ)である。

 マトリクスマップからは、特許出願件数の上位出願人のほとんどが、CNFの解繊・分散性や親水性、疎水性といった課題に関連する開発を行っている中、ガスバリア性や配向性に着目した開発を行っている企業は少なからず存在することが読み取れる。そこで、A社の特徴である透明性や配向性の分類に出願している企業に着目し、虫の目(ミクロな視点)の分析(公報の読み込み)を行った。

(出所:IPジャーナル3号(2017),知的財産研究教育財団)
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 その結果、凸版印刷とコニカミノルタから注目すべきと思われる用途が抽出された。凸版印刷は、表面に平行になるように繊維を配向することによって良好なガスバリア層を形成する発明を多く出願している。一方、コニカミノルタは、CNFの繊維配向度を制御して製造された高い透明性の偏光フィルムに関する発明を複数出願している。現に、凸版印刷はCNFの酸素バリア性を活用した食品向け紙パックを、コニカミノルタはセルロース系材料の光学特性を生かした偏光フィルムを開発している。

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