正林 真之 氏=正林国際特許商標事務所 所長・弁理士。国際パテント・マネタイザー
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 今回は前回に引き続き、IoT(Internet of Things)の大きな流れの1つであるLPWA(Low Power Wide Area)への参入を想定して、同分野での知財競合を見ていきましょう。

 前回は、「出願人ランキングマップ」を使い、特許出願件数の推移や主要プレーヤーから新規事業を始めた場合の競合を検討してみました。今回は「出願人*技術分類マトリックスMAP」を使い、出願内容にまで立ち入って、「勝ち目」を考えてみましょう。

[1]事前準備──要求される技術の確認

 まず、要求される技術をあらかじめ把握しておこう。IoTとの親和性が良いLPWAは、既に確立されたデータ通信技術を活用している。LPWAのシステムには、①低消費電力、②長距離伝送、③低コスト、④大量接続、が要請される。さらに、通信技術として⑤セキュリティー技術と、既に存在する機器との接続が中心となることから⑥ネットワークへの接続技術、が肝になる。

① 低消費電力技術
 通信機器は、電波の送受信時に多くの電力を消費する。一般的な電池で数年から十数年の運用が可能なほどに電力を節約するためには、通信頻度を極力減らす必要がある。そのため、端末には、通信頻度が低い場合でも、安定的に起動したり、停止したりする技術が要求される。

② 長距離伝送技術
 消費電力を抑えながら通信を行う技術はBluetoothやWi-Fiがある。これらはデータ伝送速度を速めた分、受信感度が低下し、結果的に通信距離を犠牲にした。LPWAでは、データ伝送速度を絞ることで受信感度が改善することから、伝送距離が伸びる。端末には、瞬間的に高出力で数十km離れた場所へデータを送信する技術が要求される。

③ 低コスト(通信費・端末費)
 既存のキャリアの基地局を使えば通信費は1台当り数千円/月となり、利用者にとってかなりのコスト負担となる。IoTの普及には、通信や通信機器のコストを極力下げる必要があり、できる限りシンプルな端末の構造や使用する周波数帯の選択が必要である。

④ 大量接続技術
 スマートメーターなどを想定すると、数百万件のデータを処理する必要がある。低遅延についてはそれほど重要ではないが、効率的な通信制御やネットワークへの再接続などの技術が必要となる。

⑤ セキュリティー技術
 多数の端末からデータを安全に送受信するためのセキュリティー技術は、重要なポイントである。

⑥ ネットワーク接続
 自営ネットワークと公衆ネットワークとの接続が想定され、既存の機器との接続も求められることから、階層構造を含めたさまざまなネットワークへの柔軟な接続技術が要求される。この中で、①と②、③については、ほぼ技術が確立されている。一方、④と⑤、⑥については、独自技術が必要となる可能性がある(表1)。

表1●LPWAへ要請される主な技術
(出所:正林国際特許商標事務所)
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