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正林 真之 氏=正林国際特許商標事務所 所長・弁理士。国際パテント・マネタイザー

 はじめまして。私は、正林国際特許商標事務所で所長を務める正林真之と申します。7年前から「特許・調査解析」および「IP(知財)ランドスケープ」に取り組んでいます。おかげで多くの顧客やサポーターの皆さんに、日々鍛えられています。IPランドスケープは、取り組んでみると奥が深く、まだまだ学ぶべきところが残っています。それでも、IPランドスケープを企業経営にどう生かしていったらよいかというあたりは、実務を通していろいろ見えてきました。

 そこで、今回から隔週で「事業を勝利に導くIPランドスケープ」と銘打ち、私がIPランドスケープについて日頃から考えていることを語っていこうと思います。内容は、解説だけではなく、事例も多数惜しまずに載せていくつもりです。少しでも読者の皆さんの参考になれば幸いです。

競合企業の開発戦略が見える

 もはや現代のビジネスでは「良い商品やサービスは放っておいても売れるはず」という考え方は成立しない。売るために重要なのはマーケティングだ。そして、このマーケティングと相性の良い「特許情報」を使った調査・解析を大きく進化させたものが「IPランドスケープ」である。

 マーケティングのポイントは、次の2点に集約される。
①顧客ニーズの把握(顧客企業のニーズの把握)
②市場の状況(競合の動向も含めた市場の状況)の把握

 マーケティングは通常、社内のマーケティング部門や企画部門、営業部門が担当している。このマーケティングの多くの部分を「特許情報を使った調査・解析」を活用した「IPランドスケープ」によって、分析することができる。

 こう聞くと多くの読者は、「特許情報はミクロの地味な世界で、一方のマーケティングはマクロの華やかな世界。真逆ではないのか?」と感じることだろう。しかしながら、この地味な特許情報は、以下のような特性を持っているため、実はマーケティングと相性が良いのである。

 そもそも特許出願は、企業が必要と判断して経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を投入した開発活動の成果であり、特許情報は企業の技術的な本音が反映されたビッグデータである。つまり「特許情報は嘘をつかない」。さらに特許情報は、分類やテーマ、商品開発の動向(時系列情報)が整理されていて分析しやすく、また「いつ、誰が、何に、どの程度興味を持っていたのか?」を客観的に知ることができる。

 特許出願は国内だけで毎年約30万件、海外も合わせると毎年数百万件に及ぶ。これらを調査・解析することによって、多くの有益な情報を得ることができる。 

 従って、「IPランドスケープ」による分析では、例えば着目した企業の競合企業が狙っている開発の方向性や開発戦略、特定領域でかすかに生じた“潮流”などのあぶり出しができる。また、着目企業の技術力に関する特許から見た「強み・弱み」の分析(およびそれに応じた対策の提案)や、着目企業のコア技術に関する新規用途の探索、そのコア技術を必要としていると考えられる提携先候補の探索などが可能になる。「IPランドスケープ」は、まさに企業が「知財戦略」を実践するための力強い武器なのである。

経営課題・事業への貢献が目的

 それでは「IPランドスケープ」とはどのようなものか──。まず重要なことは、「IPランドスケープ」は「経営課題・事業への貢献」を目的とすることである。すなわち、「IPランドスケープ」は単なる特許MAPではなく、「知財情報を軸として事業情報や市場動向、財務、その他の非知財情報を総合的に加味しながら、対象企業の現在置かれている位置付けとその将来の可能性を見極め(未来を提言し)、経営に役立てるもの」なのだ。これが、正林国際特許商標事務所としての定義である。

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 例えば、以下のようなビジネスの局面において、「IPランドスケープ」はその力を発揮する。

  ・アライアンス/買収 ― 着目企業と相乗効果の期待できる企業の探索
  ・研究開発      ― コア技術に関する新規用途探索
  ・新規ビジネス   ― “潮流”に基づいた今後可能性のあるビジネスの探索
  ・資金調達      ― 知財DD(他社特許を踏んでないか、技術は独自かなど)

 単なる特許MAPは「IPランドスケープ」ではない。しかし、特許MAPによる解析は、「IPランドスケープ」に必要な「マーケット・製品などの情報という横糸」を絡めるための縦糸であり、「IPランドスケープ」の要素として重要である。また、特許MAPは、「IPランドスケープ」の実践プロセスを「見える化」、あるいは「見せる化」する有用な手段でもある。

 このように特許MAPは「IPランドスケープ」においても重要な要素であるため、以下、主要な特許MAPについて説明する。

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