片道24時間の移動時間がゼロに――。現実空間の物理的な制約を気にせず、デジタル空間で自由に観光体験が可能なVR(Virtual Reality)技術は、一見すると観光と相反する存在に見える。だが実際には、VR観光はリアル観光のお試し版のような存在で、旅行前に雰囲気を確認する用途が大きい。現地での体験を向上させるAR(Augmented Reality)も含めて、VR/ARは「現地に行きたい」と思わせる観光促進剤となっているが、遠隔操作ロボットを使った次世代の旅行体験も登場し始めた。

 VRと遠隔操作ロボットを使った、次世代の旅行体験が実現しようとしている。東京から約1000km。移動手段は片道24時間かかる船だけで、しかも1週間に2本しか運行されていない。そんな環境にある東京・小笠原諸島を、遠隔操作ロボットで観光する取り組みがある。KDDIらが「テレイグジスタンス(遠隔存在感)」と呼ぶ技術を使って遠隔旅行を実現した。

KDDIが出資するロボットベンチャーTelexistenceが開発した遠隔操作ロボットの量産型プロトタイプ「MODEL H」
VR用HMDと専用コントローラーで操作する。ロボットの大きさや重さが従来の約10分の1となり、操作機器もトランクケース1つに収まるなど、小型化・可搬化が進んだ。(出所:KDDI)
[画像のクリックで拡大表示]

 テレイグジスタンスとは、遠隔地のロボットを操作し、ロボットを通じて離れた場所の人や物とのコミュニケーションを実現する技術である。ロボットの目に当たる部分に搭載した2つのカメラの映像をVR用ヘッドマウントディスプレー(HMD)で見ながら、専用のコントローラーでロボットを操作する。触覚提示できるコントローラーを使用すれば、ロボットが触った際のザラザラ感などを再現できる。KDDIによれば、自ら静的なものに触れるような能動的な体験では、遅延はあまり気にならないという。だが、ロボットがとっさに障害物を回避するなどリアルタイム性が重要な操作を求める場合は、低遅延を実現する5G(第5世代移動通信システム)が必要になる。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら