ITの先進的な取り組みをしている自治体の情報化統括責任者などが参加する「政令市・中核市CIOフォーラム」が、2018年5月15日に初の単独会合を開催した。午後のセッションでは「働き方改革とRPA(Robotic Process Automation)+人工知能(AI)の活用」についてプレゼンテーションがあった。

 最初に、熊本県宇城市の天川竜治総務部部次長兼市長政策室長と中山健太市長政策室参事が「RPAの活用による業務改革」と題して報告した。RPAはソフトウエアロボットを導入して業務の自動化を図るものだ。

 まず天川氏がRPA導入の背景を説明した。宇城市は2005年に5つの自治体が合併して誕生した。その後「人口の減少に伴って職員数の削減を進め、合併から11年で職員数を670人から512人まで減らした」(天川氏)。

熊本県宇城市の天川竜治総務部部次長兼市長政策室長
(写真:皆木 優子、以下同じ)
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RPAで年間1000万円超の人件費削減効果を見込む

 ただ、2016年の熊本地震で大きな被害を受け、災害復興業務への対応で職員の負担が急増した。足りない人手を補う手段として、たどり着いたのがRPAだった。「メールを受信して添付ファイルを開き、データを別ファイルに転記して送信する」といった、比較的単純だが複数の人が関わる作業を代わりにできるシステムを導入した。

 RPAの導入で効率化が可能な時間を総計2万2654時間(年11.8人分)と推定。2018年度は「ふるさと納税業務に加え、住民異動届、職員給与、会計審査・出納業務にRPAを導入する予定で、合計3632時間の業務を削減できる」(中山氏)と試算している。これを人件費に換算すると、年間1193万円の削減になるという。RPA導入に必要な費用2345万円を差し引いても、5年間で3620万円の削減効果を得られると見込んでいる。

熊本県宇城市の中山健太市長政策室参事
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 宇城市は課題として「初期にはRPAの特徴把握、製品やサービスの比較といった情報収集、導入後は対象業務の洗い出しと作業の細分化にマンパワーがかかる」と説明。今後はRPAの適用範囲を制限するのに加えて、AIやOCR(光学式文字読み取り装置)、クラウドなどを活用して、少数精鋭で質の高い住民サービスの提供を目指す。

 質疑応答では、東京都世田谷区の齋藤稔政策経営部情報政策課長が「RPA導入の業者選定はどのように実施したのか」と尋ねた。中山氏は「2017年度の総務省業務改革モデルプロジェクトに応募した際、業務改革全般について依頼した地元のシンクタンクやコンサルタントから、RPAに詳しい業者の紹介を受けた」と答えた。

RPAで2時間の作業が15分に短縮

 次に、東京都港区の若杉健次総務部情報政策課長が「港区におけるRPA導入について」と題して報告した。

東京都港区の若杉健次総務部情報政策課長
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 港区は、2017年11月から12月にかけてRPA導入に向けた実証実験を行った。人事庶務システムから超過勤務の多い職員を抽出し、所属長に健康管理通知を出す業務で、「人手で2時間かかっていた作業を15分でできることが判明した」。

 この結果を受けて、子ども家庭支援センターでRPAを先行導入。「産前産後家事・育児支援サービス」の電子申請で、名前・住所・依頼日時・ヘルプ内容・地図が記載された外部委託先への依頼書作成をRPAに置き換えることで、年間300時間の作業削減が可能になった。

 2018年度から本格導入を開始し、現在3つの業務に適用している。いずれも内部事務であり、3つの業務合計で年間1500時間の削減を見込む。2018年4月に見直しした「港区情報化計画」のなかで、「働きやすい職場づくりに向けた業務の効率化、適正化の推進」の具体的な取り組みとして、「業務自動化ツール」の名称でRPAの導入を示した。

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