「資格は取っておいた方がよいのでしょうか?」「どの資格を取ればよいでしょうか?」──。講義や講演の後に、私はこうした質問をしばしば受けます。

 ITエンジニアにとって、資格は大きな学習目標にもなっています。そこで今回は、これからのITエンジニアが目指すべき資格とは何か、もっと言えば、これからのITエンジニアに必要なものは何かについて述べたいと思います。

IT資格は「免許」ではない

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伊本貴士=メディアスケッチ代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サイバー大学客員講師

 私は大学の頃から情報処理技術者試験を目標に据えて、情報処理二種(現在の基本情報技術者)や応用情報技術者、ネットワークスペシャリストの各試験に合格しました。その他にLinux関連の上位資格なども持っています。しかし、このことを誰かに伝えるのは転職するときぐらいです。講演時のプロフィールにも書いていません。

 もちろん、転職の際に資格があれば一定の評価にはつながります。しかし、現時点においてITの資格は「免許」ではありません。それがないと何かの職に就けないというわけではなく、その人の技術力や知識量を測る尺度の1つでしかありません。

 よって、資格が絶対に必要かといえば、そうとは言えません。実際に、資格は持っていないのに、第一線で活躍するスペシャリストと呼ばれるITエンジニアはたくさんいます。

ITエンジニアの「ポートフォリオ」

 2000年ごろのことです。IT業界が「買い手市場」となり、企業の採用倍率が10〜100倍という非常に高い時がありました。いわゆる「就職氷河期」と呼ばれる時代です。その時代は、書類選考や面接で少しでも良い印象を与えて自己をPRしようと、在学中にIT資格の取得を目指す人がたくさんいました。

 しかし残念ながら、今では経験的に「資格=実力」ではないことに、まともなIT企業なら気付き始めています。そのため、最近では面接時に「ポートフォリオ」を求めるIT企業が増えています。ポートフォリオとは本来、金融業界における資産一覧のことですが、IT業界でいうポートフォリオとは、自分の開発実績や開発したプログラムなどを一覧にしたものです。

 例えばWeb開発であれば、自分が開発に携わったWebサイトや、勉強の過程において自主的に作ったWebサイトのコードなどをポートフォリオとして求められます。つまり、それによって資格による知識量だけではなく、開発の業務遂行力を見ようとしているのです。プログラマーであれば、実際に作ったプログラムのコードなどを提出します。

 業務で作ったものではなく、勉強のために自分で開発したゲームでも構いません。他人が作ったものを自分が開発したと騙(だま)して提出することも想定されますが、知識のある面接官がいくつか質問をすれば、それが本当か嘘かはすぐに分かります。

 こうした変化に伴い、私が各所で実施しているさまざまなIT講座でも、資格対策講座よりも、今すぐ業務や開発に生かせる実践的なスキルが学べる講座を望む声が大きくなりました。

 また、最近は人手不足でIT企業の採用基準が低くなっており、業界の未経験者でも比較的簡単に就職できるようになっています。そのため、採用後に足りない実力を補うために、どのように学習すればよいかで悩んでいる人が増えていることも、実践的な講座の希望者が増加している背景にはあると思います。

 こうした時代変化によって、「資格=実力」という「資格神話」は崩壊しました。

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