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伊本貴士=メディアスケッチ代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サイバー大学客員講師

 炎上案件──。難航中のプロジェクトをIT業界ではこう表現します。大企業で進めているプロジェクトで大規模な炎上案件が発生すると、高い技術力を持つITエンジニアが助っ人として投入されることは珍しくありません。私もこれまでいくつもの炎上案件の仕事を手掛けてきました。

 やっかいだったのは、炎上しているプロジェクトに途中から参加したケースです。既に参加しているメンバーは疲れ果ててイライラしている上に、どうすればよいのか分からず行き詰まっていました。ここに投入された私は、一体どこに炎上の原因があるのかをプロジェクト全体を見渡して分析してみました。すると、原因は「要件定義の曖昧さ」にあると分かりました。要件定義とは、ITシステムやソフトウエアに関して、顧客が要求する機能や仕様をまとめたものです。実はこのケースに限らず、要件定義が曖昧なために炎上が起きることが多いのです。

要件定義をおろそかにする理由

 では、なぜ要件定義を曖昧にしてしまうのでしょうか。私の経験から言わせてもらうと、次の3つの理由が考えられます。

[1]開発側のマネージャーが要件定義の方法や必要性を認識していない。
[2]会議で話した内容で要件が決まったと思い込んでいる。
[3]そもそも発注側に明確な要件が存在しない。

 これらは、マネジメント手法をきちんと勉強せず、年功序列でプロジェクトマネージャーになった人が多く抱える問題です。自分自身の開発能力を過信しており、いざとなったら自分が開発すれば何とかなると思っている人が多い気がします。残念ながら、要件定義が出来ていないときは、開発工数が想像以上に膨らみます。従って、1人で何とかできるレベルを超える場合がほとんどです。

 社内でこうした事態に陥ることを防ぐには、技術力や年功序列ではなく、きちんとマネジメント手法を学んでおり、プロジェクトマネジメントの国際資格であるPMP(Project Management Professional)を取得していたり、情報処理のプロジェクトマネージャーの知識を備えていたりする人材をマネージャーに選ぶのが最低条件です。その上で、利害関係のないプロジェクト外の人材がプロジェクト監査を定期的に行うことが重要です。仲間内では「なあなあ」になってしまい、監査にならないからです