IoT(インターネット・オブ・シングズ)で人やモノの状態を把握し、その変化を知ることで個別の対策を取ったり、その人だけのオリジナル商品を作れるようになってきた。IoTの普及で、オーダーメードが安価に実現しやすくなったのだ。

 例えば、現地入りが難しい離島にある水道メーターの遠隔検針。鶏舎の環境をスマートフォンで24時間監視できる養鶏場。さらには人の肌の状態を示すデータをスマホで取得して、自分だけの化粧品を家庭で作れる夢のようなマシン。そんな奇想天外なIoTの活用事例を順に見ていこう。

離島の水道検針を自動化し、検針員を重労働から解放

 瀬戸内海に浮かぶ兵庫県姫路市の離島、西島。船をチャーターしなければ上陸できないその島に2カ月に1回、定期的に通う一団がいる。水道の検針員たちだ。厚生労働省によると、日本の水道普及率は2015年で97.9%。離島も例外ではなく、西島には本州から海底配管を通して水を送り、上水道を提供している。水道の検針作業は、場所が離島でも市街地と同じだ。検針員が現場に赴き、水道メーターを目視で確認する。そのため、わざわざ船をチャーターして島に通っていた。

チャーター船で西島に上陸する水道の検針員たち
(出所:第一環境)
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 こうした手間がかかる検針作業を劇的に変えたのがIoT。姫路市から水道検針業務を受託している第一環境は2017年11月、西島の水道検針の自動化に踏み切った。西島に設置してある28個の水道メーターを全て、無線発信機付きの電子式メーターに交換。本州から遠隔検針が可能になった。船のチャーター費を削減できただけでなく、「検針員が重労働から解放された」(第一環境の松本太郎常務取締役)。水道メーターの無線通信手段としては、LPWA(ローパワー・ワイドエリア)の一方式である「Sigfox」を採用した。

Sigfoxの無線発信機を取り付けた水道メーター
(出所:京セラコミュニケーションシステム)

8年間電池交換なしで稼働するのが条件

 水道メーターの設置場所はガスや電気のメーターとは異なり、かなり分かりにくい。西島では草木が生い茂るジャングルのような場所に分け入ってメーターを探したり、重いふたを開けたりして、ようやく検針ができることも少なくなかった。西島ではそんな過酷な場所での検針作業が求められた。検針員の高齢化が進むなか、重労働のため「新しい人手の確保が難しいのが実情だった」(松本常務)。

草木が生い茂るジャングルのような場所で、水道メーターの検針を実施してきた
(出所:第一環境)
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 これまでも他の通信手段を使った遠隔検針は議論されてきた。だが通信料金の高さと電力供給がネックとなり、実現には至らなかった。その点、Sigfoxの通信料金は端末台数にもよるが、最も安い場合で1台当たり月額8円ほど。西島は端末数が少ないのでそこまで安くはならないが、それでもクラウドのシステム利用料などを含めても「船をチャーターして人が検針に行くよりはずっと安上がりだ」と、第一環境の菊地和彦事業企画部長は明かす。

 電力消費の面でも、Sigfoxは優れていた。水道メーターは計量法施行令により、8年間の有効期間が定められている。水道メーターを提供するアズビル金門の大谷眞弘水道ソリューション営業部マネジャーは「水道メーターには8年間電池交換なしで稼働し続ける省電力技術が必須だ」と話す。この条件を満たすものとして、LPWAに白羽の矢が立った。新しいテクノロジーの登場で、法律の要件を満たせるようになった。

 ただし、省電力と引き換えに、LPWAの通信は低速だ。それでも西島の水道メーターはヘッダーとフッターを除き、メーター番号と指針値、時間の合計12バイトの小さなデータを1日2回送信するだけで済む。通信速度が遅くても、十分に送れるデータ量だったので実用化できた。

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