センサーの普及と低消費電力で広域の通信ができるLPWA(ローパワー・ワイドエリア)の登場によって、モノの動きをつかむIoT(インターネット・オブ・シングズ)の事例が続々と登場している。なかでも効果的なのが高級品。無くしたり、盗難に遭ったりした際の損失が大きいので防止策が望まれる一方、もともと高価なため通信料金などが別途付加されても全体の金額に占める割合は相対的に小さいためだ。ブランド物のバッグ、ロードバイク、本マグロと、奇想天外のIoT事例を見ていこう。

ルイ・ヴィトンのカバン、空港内を専用デバイスで追跡

 年間2228万件――。2017年に発生した空港における荷物の取り扱いミス、つまりロストバゲージの想定件数だ。SITA(国際航空情報通信機構)によると、2017年のロストバゲージの発生率は旅客1000人につき5.57%(約60人)。2017年の総旅客数は4億人に上ることから、2228万件のロストバゲージが世界で発生したことになる。2018年4月、こんな旅行者の不安を払しょくするサービスに、高級ブランドの仏ルイ・ヴィトンが乗り出した。

 ルイ・ヴィトンの旅行カバンに専用の追跡装置「エコー」を組み込んで、カバンが空港内のどこにあるのか、カバンが開閉されたかを顧客のスマートフォンアプリ「Louis Vuitton PASS(LV PASS)」に通知する。対象となるカバンは、ルイ・ヴィトンの「ホライゾンシリーズ」。開始時点で、世界115カ所の空港で利用できる。国内では成田、羽田、関西国際、伊丹、福岡の各空港で使える。

ルイ・ヴィトンの旅行カバン追跡装置「エコー」
(出所:仏シグフォックス)
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 ホライゾンシリーズの旅行カバンの価格は、サイズにもよるが40万円近い。そこに通信料金が付加されても全体に占める割合は小さく、追跡機能を組み込みやすい。エコーの価格は4万2120円。「販売価格に3年間の通信料金が含まれている。3年後に関しては現時点では未定だが、購入時に登録するLV PASSか、メールアドレスに今後の通信条件を送る予定になっている」(ルイ・ヴィトン広報)。 

 エコーは通信機能やセンサーを組み込んである。旅行カバンの「ホライゾン 70」および新仕様の「ホライゾン 50」「同 55」の蝶番部分に備わる専用取り付け口に装着して利用する。旧仕様のホライゾンの場合、追跡は可能だが開閉情報は取得できない。通信にはLPWAの1方式である「Sigfox」を使う。Sigfoxは仏シグフォックスが開発したLPWA。各国・地域でSigfoxによる通信サービスを提供できるのは原則、1つの事業者に限られる。日本では京セラコミュニケーションシステムが提供する。

エコーに対応するルイ・ヴィトンの旅行カバン「ホライゾン 55」
(出所:LOUIS VUITTON MALLETIER)
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 技術面の特徴は通信する際に、利用する周波数帯や提供事業者が異なる国・地域の空港でもユーザーが意識することなく、シームレスに使える点だ。シグフォックスの「Monarch(モナーク)」と呼ぶ技術を採用した。

 位置の特定にはGPS(全地球測位システム)を使うケースが多いが、エコーはモノの動きを検知するセンサーとSigfoxの基地局の情報などから空港内の場所を割り出す。内蔵するセンサーが空港への到着を何らかの動きから検知する。どのような動きで空港に到着したと判断するかは非公開だ。カバンの開閉情報は光センサーで取得する。

 エコーはカバンが空港に到着すると通信可能な状態になり、Sigfoxの基地局からビーコンを受信。それを受けて各国・地域に合わせた周波数帯でデータを送信する。基地局の情報から場所も特定できる。電力消費の多いGPSを搭載せず、飛行中は自動的に電波を発しない機内モードに切り替わるため、省電力性能も優れる。1時間の充電で約6カ月間、作動するとしている。

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