熊谷組が施工する、大阪市西区にある雨水滞水池築造工事の現場。2018年6月29日、槽の構築に使われた足場の撤去作業が粛々と進んでいた。閉所が多く風通しも良くはない。気温は最高でも30℃程度だが、スコールのような雨が断続的に降って湿度が高く、熱中症予防の目安となる熱中症指数「WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)」は、常に警戒レベルに達していた。しかも安全面に配慮するために長袖長ズボン、ヘルメット着用であり、座っているだけでも消耗するような現場だ。

大阪市西区の雨水滞水池築造工事の現場における足場撤去作業の様子(写真:立命館大学大学院 准教授 児玉耕太氏)
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 作業2時間ごとに1時間の休憩を取る――そんな安全対策と同時に、この現場ではICT(情報通信技術)の活用が図られている。実は、ICTによって建設現場での生産性向上を図る、いわゆる「i-Construction」の実証実験が行われている真っ最中なのだ。作業者は生体情報を取得するためのウエアラブル機器や無線通信端末を身に着けている。

 今回の実証実験の目的は「安心・安全」「生産性向上」の2つだ。そのために、ウエアラブル機器や無線通信端末を使い、作業者の位置と生体情報を常時取得する。こうして得たデータを解析し、行動の最適化・効率化に結びつけるというのだ。作業レイアウトの改善に作業動線解析の結果を利用するほか、熱中症予防に役立てるといった使い方も想定する。

 背景にあるのは、建設業界における作業者の高齢化や熟練作業者の減少、外国人労働者の増加といった課題だ。いかに作業を邪魔せず非言語的に素早く情報をやり取りできるかが重要となる場面で、ウエアラブル機器が貢献するというわけだ。「建設業界は人手不足に悩む業界の1つで “作業中などに死亡した労働者”の約3割、“熱中症による死傷者”の約3割がいずれも建設業という状況にある。現場における生産性と安全性の向上は喫緊の課題になっている」と、今回の実験を進める立命館大学大学院 テクノロジー・マネジメント研究科 Life Innovation Design Laboratory 准教授の児玉耕太氏は話す。

 実験は、国土交通省の建設技術研究開発助成制度「政策課題解決型技術開発公募」にi-Construction推進技術として採択された「建設現場におけるスマートウェアを用いた安心・安全及び生産性向上IoTシステムの開発」の一環として行われた。「建設現場における生体情報と位置情報の連携は、今回が初」(児玉氏)。生体情報としては、ウエアラブル機器の「COCOMI」を使って体温と心拍数、自律神経バランスを計測する。データは1秒間に1回の頻度で取得する。

 COCOMIは、導電材料を使ったフィルム状の機能性素材である。心拍などを測定する生体情報計測ウエアのセンサー用電極材や配線材として用いることができる。東洋紡グループが生体情報計測に向けて開発し、東洋紡STCが扱っている。最大伸び2.0倍という伸縮性を持ち約0.3mmと薄いために着心地が良く、熱圧着で簡単に生地に貼り付けられるといった特徴を備える。モニターとなった作業者約30人が、こうしたセンサー電極を搭載するシャツを着用し、胸に電気信号から心拍周期を検出するセンサー本体「WHS-2」(ユニオンツール)を付けた。

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年代などを限定せず、約30人の作業者を被験者とした(写真:立命館大学大学院 児玉氏)

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