資格取得後すぐにそれで収入が得られればよいのですが、そうでない場合、退職金は貴重な生活資金になります。早期退職で退職金が割り増しされるといっても、お金は無尽蔵にありません。

 もちろん、資格取得がいけないわけではありません。退職によって「会社員」という安心感がなくなるわけですから、食べていける資格が欲しいと思うのは自然なことです。特に技術系の人は「手に職を付けなければ」との意識が強いようです。ただ、「資格取得」と「収入」が必ずしも結びつかないことを覚えておく必要があります。

 興味深いことに、筆者が支援している早期退職者がチャレンジする資格の多くは、取得に100万円以上かかるものです。「ここまでのコストを払って取った資格なら競合が少ない」と考えるからでしょう。

 しかし実際は、資格を持っていることとそれでお客さんを集めることは別物です。「高額の授業料を払う人は少ないから資格取得者も少ない、だから開業すればもうかる」というのは早計です。

 金銭的コストだけでなく、取得にかかる時間や労力も考慮に入れましょう。資格を取るまでに1~2年かかるものなら、「本当に途中で飽きないか」「自分とは年齢や性別が異なる人たちの中で学び続けられるのか」など十分に検討した方がよいでしょう。

資格取得はじっくり考え、長期計画で臨む

 早期退職者募集への応募にかかわらず、「資格取得していつかは開業」と考えている人は、3~5年など長期の計画で取り組むことをお勧めします。また、資格ありきで考えないような意識を持つことも重要です。「国家資格ではあるが、開業には必須ではない」といった資格もあるからです。

 資格取得のための学校や教育サービスは多数ありますが、本当に必要か、本当に挑戦したいのかをしっかり考えましょう。そうしないと、せっかくの退職金の一部を無駄にしかねません。

天笠 淳
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
天笠 淳 早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。