前回、ヘッドハンティングの裏側を取り上げました。人材紹介業界では「サーチ」と呼ばれ、サーチの対象となるのは一部の人であることを説明しました。

 今回は、そんなサーチ対象者のリアルな話を紹介しましょう。実際に企業から依頼を受けてサーチを手掛けている、人材エージェントのモリさん(仮名)から聞いた話です。

 前回説明したように、サーチを事業としている会社を「サーチファーム」などと呼びます。サーチファームは企業から依頼があると、自社のネットワークを使って候補者を探し、アプローチします。

 企業の広報資料やイベントでの何気ない名刺交換まで、様々な形で目当ての人物の連絡先を入手。メールや電話でコンタクトを取ります。どうしても連絡先が分からない場合、氏名と勤務先のドメイン名でメールアドレスを推測して連絡を取るサーチファームもあります。

 候補者にしてみれば突然転職を持ちかけられるわけですから、びっくりしそうに思えます。サーチファームの担当者が面談を申し込んでも、断られそうです。しかしモリさんによれば、ほとんどの候補者が会ってくれるそうです。

サーチ対象者がエージェントに会う理由

 その理由の1つが、実績のあるサーチファームは、経営層などサーチ対象となるような人材の間では知られていること。急なアプローチを受けても、あまり驚きません。

 サーチファームに会うことで情報収集ができるという理由もあります。今すぐ転職したいとは思っていなくても、なぜ自分に声を掛けたのかをサーチファームに聞くことで自分の評価を確認できます。さらに、対象の業界や企業がどのような状況にあるかをヒアリングすることも可能です。自分の働き方や世の中の流れをつかむために良い機会になるのです。

 一方、サーチファーム側は、初対面の場所も非常に気を使うそうです。すぐ隣に別のお客さんが座っているようなコーヒーチェーンは使いません。モリさんの場合、ホテルのティールームや自身のオフィスを、相手の都合に合わせて活用しています。

 実際に面会が実現したとしても、転職話はすんなりとはまとまりません。オファーがあったポジションや役割、報酬などについて慎重に擦り合わせを実施します。その結果、オファーを受けないという判断になることも多々あります。