今までのやり方では、競争を勝ち抜く商用車は造れない――。乗用車に比べてメーカーごとの競争が緩やかだったトラックやバス。運転者不足や排ガス規制を背景に先進技術の需要が高まり、競争が激しくなってきた。国内商用車首位の日野自動車で社長を務める下義生氏に車両開発の方向性を聞いた。

(聞き手は久米 秀尚=日経 xTECH/日経Automotive、窪野 薫=日経 xTECH)

下 義生(しも・よしお)。1959年生まれ。東京都出身。1981年に早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、日野自動車工業(現:日野自動車)に入社。2002年米国日野自動車販売へ出向、上級副社長。日本に戻り、海外企画部や北米事業部の部長を経験。2011年から執行役員、2015年に専務役員。2016年にトヨタ自動車に出向し常務役員を務める。日野に戻り、2017年から現職。(写真:加藤 康)
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商用車で競争軸になっているテーマは。

 安全性能の強化が必須だ。安全に対する考え方はずいぶん変わってきた。どの物流会社も人手不足で運転者を大切にする傾向が強く、安全性を向上する技術にコストを惜しまなくなっている。大型トラックで長距離の物流を担う運転者は特に負荷が大きく、家族からは働き方を心配する声が挙がる。

 トラックやバスの運転者は、事故の被害者になることもあれば、自身のミスで加害者になることもある。高速道路の事故で増えているのは停車している前方車両に突っ込んでしまうケースだ。乗用車に大型トラックが突っ込んだら、トラックの運転者は無事かもしれないが、乗用車の乗員が亡くなる可能性が高い。万が一大型トラックが暴走したら、影響は乗用車の比ではない。

 乗用車でも自動ブレーキをはじめとする安全性能の向上は進むが、トラックやバスではそれ以上の性能の安全装置が必要になる。例えば、自動運転用のセンサーひとつをとっても、80km/hで走行中の25tトラックを安全に停車させるには、乗用車以上に遠くを検知する必要がある。

 そうすると、乗用車で培った技術の流用だけでは成立しない。協力する仲間が重要になってくるわけだ。日野が属するトヨタグループには、デンソーやアイシン精機、ジェイテクトをはじめ、大手の部品メーカーが多くいる。必要性能に関する意見交換を積極的に進めているが、乗用車に比べて販売台数が少ないトラックやバスはマイナーな領域だ。乗用車の技術が主体でそれを流用する展開になりやすい。

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