「経営者としては失格だが、儲けや販売台数が減ってでもやるべきことがある」――。こう訴えたのは、国内商用車首位の日野自動車で社長を務める下義生氏だ。2017年の社長就任以降、ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)のトラック・バス部門(VWTB)との提携や、物流課題の解決を狙った新会社の設立など、ギアを上げて改革を進めている。同氏をここまでかき立てるのは、トヨタ自動車から持ち帰った「危機感」だった。

(聞き手は久米 秀尚=日経 xTECH/日経Automotive、窪野 薫=日経 xTECH)

下 義生(しも・よしお)。1959年生まれ。東京都出身。1981年に早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、日野自動車工業(現:日野自動車)に入社。2002年米国日野自動車販売へ出向、上級副社長。日本に戻り、海外企画部や北米事業部の部長を経験。2011年から執行役員、2015年に専務役員。2016年にトヨタ自動車に出向し常務役員を務める。日野に戻り、2017年から現職。(写真:加藤 康)
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下社長はトヨタ自動車の常務役員を経て日野自動車の社長に就任した。

 日野に戻ることが決まったある日、トヨタの豊田章男社長に助言を受けた。それは経営者としての判断と責任の重要さ。「判断するのが社長で、そのあとにすべての責任を取るのも同じく社長の仕事。もっと言うと、社長しか責任は取れない」と、心構えを教えてくれた。

 (2016年に出向した)トヨタではグループ戦略やアライアンス(提携)といったコーポレート部門で約1年間の経験を積んだ。あれだけの台数の車両を販売し、高い収益をあげているトヨタであるが、常に危機感を持ってグループ戦略を考えている(編集部注:2017年度のグループ世界販売台数は約1044万台、売上高約29.4兆円、営業利益約2.4兆円)。変化する市場や規制、競合他社の動きを分析し、現状では「ダメだ」と満足しない。

 特に2018年は、トヨタの広瀬工場における電子部品の生産をデンソーへ移管することを決めたり、アフリカ事業をすべて商社の豊田通商に委ねたりと、大きな動きが出てきている。事業変革に対する姿勢やスピードの速さは、日野を経営するうえで大いに参考にしている。

 企業の舵取りで必要なのは、合意形成をどのように取るかだ。次の事業方針を決めるとき、100%の賛同を得られることはまずない。51:49のとき、50:50のときに、どういう判断を下すかが経営者の手腕が試される。責任とリスクも当然のように発生するが、「今」決めなくてはいけないときは必ずある。

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