小型から大型まで幅広く商用燃料電池車(FCV)戦略を進めているのがトヨタ自動車だ。中型の車両としてはFCバス「SORA(ソラ)」を展開している。2019年3月には、京急グループの京浜急行バスが民間事業者として同車両を初めて導入した。FCバスだからこそ必要な開発のポイントとは――。ソラ開発責任者の権藤憲治氏に聞いた。

(聞き手は窪野 薫=日経 xTECH)

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トヨタ自動車の燃料電池(FC)バス「SORA(ソラ)」、総容積600Lの水素タンクを屋根部分に搭載し、1回の水素充填で約200kmを航続可能にした(撮影:日経 xTECH)
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FCバスの開発は、乗用FCV「MIRAI(ミライ)」とは違う難しさがある。

 まず大きく違うのが、耐久性への要求が高いこと。商用車は稼働を止めないことが最重要だからだ。FCVでは、FCスタックの劣化が懸念点である。ソラでは、FCスタックの制御をミライから刷新した。電位変動を可能な限り一定にするために、搭載するニッケル水素電池から出力を補完できるような仕組みに変更。長い距離を故障なく走れるようにした。

ソラの開発責任者を務めたトヨタCV製品企画ZM主査の権藤憲治氏(撮影:日経 xTECH)
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 トヨタのFCV開発方針としては、ミライのような乗用FCVで20万km、ソラのようなFCバスで60万kmを走れるように、耐久性の基準を設定している。その他、小型FCトラックは100万km弱、大型FCトラックでは100万km以上が基準値だ。利用年数は10~12年ほどを想定する。ソラのような街乗りのバスは、走行時間は長いが平均車速は15km/hほどと遅い(東京都内の場合)。そのため、大型トラックほどは必要距離は延びない。

 10~12年間使い込んだ後が大変だ。商用車は、日本での利用を終えると、海外市場のアフターマーケットに出回る。東南アジアやアフリカの企業が購入し、壊れるまで使う。車両が壊れるまで通算でどのくらい走ったか、我々トヨタでも把握しきれていない。中には、150万km以上走るトラックもあると聞く。商用FCVの場合は、水素ステーションの整備などで利用までのハードルが高いため、そこまで過酷な環境下で使うことは想定していない。

FCスタック以外の耐久性はどうか。

 アクスル(車軸)系は、100万~150万km走っても不具合が出ないように設計する。その他、車体やシャシーなどで大きな改良点はない。ベースとした日野自動車の「ブルーリボン」のハイブリッド車(HEV)仕様からの流用部品が大半を占める。ソラでは、日野が車両と駆動部分を、トヨタが電動制御やFCシステムを担当している。開発全体の指揮はトヨタが執った。

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