トヨタ自動車が2018年6月に発売した新型ハッチバック「カローラスポーツ」。路面の振動を車体に伝えにくくするショックアブソーバー(ダンパー)に、KYBの新開発品を採用した。車両旋回時にダンパーの摩擦をあえて増やす逆転の発想を採り入れて、旋回性能を高めた。

 ダンパーの開発ではピストン摺動面の摩擦を減らすのが「セオリー(正攻法)」(トヨタMSシャシー設計部の鈴木啓之氏)で、わざわざ増やすのは異例である。摩擦が大きいと、乗り心地が悪くなりやすいからだ。トヨタは旋回時に絞って摩擦を増やす工夫を凝らし、乗り心地と旋回性能を両立した。

カローラスポーツの外観(写真:宮原一郎)

 ダンパーは車輪と車体をつなぐ部品の一つ。路面の上下振動を車体に伝えにくくして、乗り心地や操縦安定性を高める要の部品である。

 ダンパーを構成する筒の中に油とピストンを入れて、車輪への路面入力の速度に応じて減衰力を発生させる。摩擦が大きくなると、ピストンが動きにくく減衰力が発生しにくくなる。摩擦を減らすのが、ダンパー開発の基本となる。

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KYB製の新ダンパー(写真:宮原一郎)

 基本を外してまでトヨタとKYBが摩擦を増やす考えを採用したのは、車線変更時といった車両をゆっくりと旋回動作するときに車体がロール(車両前から見て左右方向の傾き)する速度を抑えたいからだ。旋回中に左右の車輪にかかる荷重の変化速度を小さくすることで、「運転者の狙い通りに旋回しやすくなる」(トヨタの鈴木氏)。加えて、「ステアリングホイールにかかる手応えが増えて、操舵感が向上する」(同氏)ことが分かった。

 一方で摩擦をただ増やすと乗り心地が悪くなる。トヨタは旋回しないで走るときは、“セオリー通り”に摩擦を抑えて乗り心地を良くする使い分けを実現した。旋回中は路面から車輪にかかる横力がダンパーに加わる。横力がかかるときにピストン摺動面の摩擦を増やし、直進走行する場面では摩擦を抑える部品を新たに開発した。

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