量子コンピュータの研究開発で長く雌伏の時を送っていた日本の大手ITベンダーや研究機関が、いよいよ商用化に本腰を入れ始めた。

 1990年代から先駆的な研究開発に取り組みながら、長く実稼働するマシンの開発計画を打ち出せずにいた1社がNECだ。しかし同社は2018年1月、組み合わせ最適化問題を高速で解ける「量子アニーリング(焼きなまし)」方式の量子コンピュータを2023年までに開発すると発表した。

 開発を統括するシステムプラットフォーム研究所長の中村祐一所長は「過去の研究開発の蓄積が実を結んだ。これからでも先行企業より優れた計算能力を達成できる」と自信を見せる。今回、基礎となる量子ビットの回路技術を確立できたことで、NECは研究員を大幅に増員し、商用化に向けた開発投資に踏み切ることを決めた。

 富士通は「量子コンピュータから着想を得て開発した」という、既存のデジタル半導体技術を使った専用コンピュータ「デジタルアニーラ」を2018年5月に商用化した。クラウドサービスとして提供するほか、専任の技術者や関連SEなど1500人の体制で顧客の問題解決を支援。今後5年間で関連サービスも含めて累計1000億円を売り上げるという強気の計画を打ち上げた。

 量子効果を計算に使ったコンピュータではないが、専用LSIの開発により、規模が大きな組み合わせ最適化問題も高速で解けるようにした。富士通は、デジタルアニーラが「実用性で量子コンピュータを超える」アーキテクチャーだと訴え、世界で顧客開拓を進める。

デジタルアニーラの発表で専用LSIを披露した、富士通の吉澤尚子執行役員常務
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 このほか、NTTや国立情報学研究所(NII)などで構成する研究グループが独自の量子計算アルゴリズムで動作するという新型のマシンを開発し、実証機を公開している。日立製作所は富士通と同じくデジタル半導体技術を使って量子計算に対抗する専用コンピュータを開発中だ。

 日本からはNECと富士通、日立の大手ITベンダー3社と、NTTを中心とする研究グループの4陣営がこの分野で名乗りを上げたことになる。

先行したディーウェーブを4陣営が追う

 4陣営が商用化を進めているのは「組み合わせ最適化」と呼ばれる問題を高速で解ける専用コンピュータだ。

 この分野を切り拓いた先行者が、カナダのベンチャー企業であるディーウェーブ・システムズである。2011年に量子アニーリング方式を採用した量子コンピュータを世界で初めて商用化。最適化問題に特化しながらも、初めて量子計算を商用機で実現し、量子コンピュータが実用段階に来たことを印象付けた。

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