蟹沢さんは、10年以上前から社員大工の重要性を力説されてきましたね。

蟹沢 地域に根ざした工務店が生き残るには、それしかないと思います。これまで多くの工務店が外注大工に依存してきましたが、そのやり方は立ち行かなくなってきた。大工の高齢化が急速に進み、中堅や若手世代の大工を思うように調達できなくなったからです。このままでは5年後、10年後の企業の存立が危うくなる。

蟹沢宏剛(かにさわ ひろたけ)氏
1965年生まれ。95年千葉大学大学院博士課程を修了。2009年から現職。住宅建築の生産性向上や、建設技能者の教育システムなどに関する論文を多数執筆している
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 従って、これからの工務店は、若い大工を社員として採用・育成し、社会保険にも加入させて安心して働ける環境を整えることが不可欠です。

 こうした話を工務店の経営者にすると、以前は「大工を雇用することがどれだけ大変か、あなたは分かっているのか」と反発されたものです。ところが最近は、私の話に真剣に耳を傾けてくれる経営者が増えてきました。社員大工の重要性が認識されてきたのだと思います。

とはいえ、オフィスビルやマンションの建設現場で職人の社会保険加入が進む一方で、戸建て住宅の建設現場ではなかなか進みません。

蟹沢 その通りです。これは国の政策と関係しています。

 国土交通省が直轄する公共工事では、2017年度から社会保険に未加入の企業は、下請け企業も含め現場に入場できなくなりました。そのため、元請けの建設会社と下請けの専門工事会社が協力し、職人の社会保険の加入を一気に進めました。残念ながら、戸建て住宅は公共工事と関係が薄いので、その動きから取り残された感があります。

 最近になって、若手大工の減少に危機感を持った工務店を中心に、会社の垣根を超えて連携し、社員大工を育成する動きが出てきたのは明るい兆候です。1社では大工の育成に多額の費用がかかりますが、団体で取り組めば負担も軽くなります。

 土木や建築では行政のトップダウンで請負から雇用への動きが進みましたが、住宅では民主導のボトムアップで動き始めた。この動きは本物だと思います。

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