大林組が構想する宇宙エレベーター。2030年から施工に取り掛かれば、2050年ごろに完成する見通しだ。総工費は約10兆円と試算している。カーボンナノチューブのケーブルを「クライマー」と呼ぶ車両(図の右下)が昇降する。物資の運搬だけでなく、地球が自転する際の遠心力を生かして人工衛星を軌道上に投入する用途などでの活用が期待されている(資料:大林組)
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 定款の一部を変更して事業目的に「宇宙開発」を加えた建設会社がある。宇宙エレベーター構想を掲げる大林組だ。「宇宙旅行の父」と呼ばれた旧ソビエト連邦の科学者であったコンスタンチン・ツィオルコフスキーの思いを引き継いだ。ツィオルコフスキーは19世紀末に、「パリのエッフェル塔をそのまま伸ばしていけば宇宙に到達できる」と考えていた。

 宇宙エレベーターが完成すれば、人類最大の建築物となるだろう。宇宙から長さ約10万kmのケーブルを地上に垂らし、垂直移動する「クライマー」と呼ぶ車両を昇降させる仕組みが、現在の完成予想図として描かれている。月などで採掘したレアメタルなどを地球に運ぶ宇宙開拓時代を想定し、大量の資源を地上に届ける役割を期待する。大林組は、その実現に必要な要素技術の研究を続けている。

 大林組で宇宙事業をけん引するのが、宇宙エレベーター要素技術実証研究開発チームの石川洋二幹事だ。かつて米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究センターの研究員を務めた経験を持つ。石川幹事は、「試算では総工費10兆円。可能なら2030年ごろから施工を開始したい。完成まで20年ほどかかる見通しで、実用化は2050年過ぎとなる構想だ」と話す。

石川洋二氏。大林組宇宙エレベーター要素技術実証研究開発チーム幹事。1955年生まれ。83年東京大学大学院工学系研究科航空学専攻修了。84年に米レンスラー工科大学博士研究員、88年に米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究センター博士研究員をそれぞれ務める。89年に大林組に入社。エンジニアリング本部、技術研究所、土木技術本部などで幅広い経験を積む(写真:日経アーキテクチュア)
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 石川幹事は、宇宙エレベーターを、「垂直移動するモノレールのイメージに近い」と説明する。カーボンナノチューブでつくる10万kmのワイヤを6両編成のクライマーが時速200kmで登る。全行程は約3週間。中間点となる静止軌道(赤道上空では地上約3万6000km)に向かうにつれて地球の重力から解放されるため、クライマーの乗客は体が軽くなるのを感じるという。

 静止軌道よりも先の地上10万km地点に、カウンターウエイト(つり合いを取るためのおもり)を設置する。遠心力が卓越するため、静止軌道より先は宇宙側に引っ張られるように感じる。体が引っ張られる向きが逆になるので、床と天井をひっくり返すような地上では考えられない空間デザインが求められる。

宇宙エレベーターの全体構成。地上から静止軌道に向かう行程では地球側の重力が卓越している。一方、静止軌道よりも先は地上から10万km先のケーブル上に設置したカウンターウエイト側に体が引っ張られるように感じる(資料:大林組)
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