次の100年に向けて大変革を遂げようとしているパナソニック。その奮闘する姿を垣間見ることができたのが、米国テキサス州オースティンで開催された展示会「South by Southwest 2018(SXSW 2018)」(2018年3月9~18日)だ。SXSWでは、デジタルインタラクティブや映画・音楽・コメディー・ゲームなど多分野にまたがる製品やサービスが披露される。しかし、通常の展示会とは趣きが大きく異なる。一般的にはあまり売れるように思えないニッチ向け製品が、高い完成度で出展されるのだ。

パナソニックの会場になった、1軒丸ごと貸し切った飲食店
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 パナソニックはSXSW 2018で「Panasonic House」を設け、“見たこともないような家電製品”を所狭しと並べた。手掛けたのは、主に「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャーカタパルト)」。パナソニックで家電製品の開発・製造・販売を手掛けるカンパニーであるアプライアンス社が、新規事業創出のために作った組織だ。

 会場の入り口近くには、カフェなどの店舗に置くことを想定したおにぎり製造機「ONI ROBOT(オニロボ)」を展示した。オニロボは「米食文化を世界に広げ、コメの消費を増やす」という、壮大な野望の下に作られた製品である。

ロボットによる実演販売を想定する、おにぎり製造機「ONI ROBOT(オニロボ)」
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 今、米国などでは「ヘルシー」な食材として米食がはやっているという。海外で米食といえば寿司が一般的だが、寿司は酢や砂糖なども含み、具材の影響もあって意外にカロリーは高い。そこで、さらにヘルシーなオシャレフードとしておにぎりが注目を集め、ニューヨークやサンフランシスコでは手で握ったおにぎりを出す店が定着しつつあるという。ただし、日本でおにぎりといえば、誰でも作れる手軽な食事の代名詞だが、米国での手握りおにぎりの価格は1個500~600円と高い。

 手握りのおいしさはそのままにコストを下げて、おにぎりから米食普及を促進できないか――。そんな発想で企画・開発されたのがオニロボだ。おにぎり製造機自体はコンビニなどで既に普及しているが、形はおにぎりであっても「詰める」「形になるように切る」などが主で、握ってはいない。

 オニロボは手握りの再現にこだわった。目指したのは「お母さんのおにぎり」。外はぎゅっと固まって崩れないが、食べれば中はふわっとほぐれるという、絶妙な握り具合が肝だ。人間の手にセンサーを付けて力加減を調べた結果、瞬間的な抑えの力は強いが、握っては放すという繰り返しのなか、米の戻る力で中がふわっとすることを突き止めた。

 「ぎゅっ、ぎゅっ」というリズミカルな握り方を再現するのが3つの稼働パーツだ。当初はモーター5個で再現していたが、実用化に向けて1個で再現できるようにした。CTスキャンで確認したところ、いわゆる“コンビニおにぎり”とは違い、手握りに近い空気の入り方を再現できていたという。ロボットなので炊き立ての熱いご飯も扱うことができ、おにぎり1個を8秒で握る。今回、この握る部分の開発が終了した段階で試作機を展示し、現地で試食会を行った。

会場にスタンバイする試作機。3つの稼働パーツが動いて、三角形のおにぎりを作る。米のくっつきを防ぐため、稼働パーツはテフロン樹脂製にした
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 そんなオニロボだが、厳密には今回のためにイチから開発したものではない。業務端末など、主にB2B向け製品を扱うパナソニックのコネクティッドソリューションズ社が開発した自動レジ作業(会計、袋詰め)ロボット「レジロボ」のシリーズ製品として開発した(関連記事「生卵を割らないように袋詰め、ローソン 『レジロボ』の気遣い」)。2016年頃に開発を進めたものの、華々しくデビューしたレジロボに対し、オニロボは日本ではニーズがなくお蔵入り状態だった。

 そのオニロボを目覚めさせたのが、アプライアンス社で炊飯器を担当する“米のプロ”加古さおり氏(パナソニック アプライアンス社 炊飯器技術部 技術企画担当主幹 ライスレディ)だった。加古氏は「国内の米消費量拡大」をテーマにGame Changer Catapultに応募するも、ターゲットは日本よりも海外の方がいいのではないかとの指摘を受け、海外に向けた戦略を考えていた。そこで思い出したのが、炊飯器技術部が開発に協力したオニロボだった。「スターバックスにも置けるおしゃれなデザイン」を身にまとったオニロボは、こうして日本から米国へ海を渡った。

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