2012年の中央自動車道・笹子トンネルの天井崩落事故をきっかけに、一気に社会問題となったインフラの老朽化。それ以来、国や自治体、高速道路会社をはじめとしたインフラの管理者は、インフラ点検に膨大な労力をつぎ込んでいる。

 インフラは巨大だったり立地条件が悪かったりと、地上から人が目視点検するのが難しいケースが少なくない。おのずと、省力化に向けてドローンを活用する機運が高まっている。

 先行しているのは、ドローンに積んだカメラを使った橋桁や橋脚の“目視点検”。一方で、飛行条件の悪い管路内の点検や、ドローンに搭載したハンマーでコンクリートをたたいて劣化状況を確認する「打音検査」など、これまでにないドローンの使い方も始まっている(以下も、情報は2017年6月26日時点)。

[管路点検]直径200mmの管内飛行を目指す

 直径400mmの下水道管内を飛行し、映像を撮影する点検用ドローンが登場した。開発したのはNJSと自律制御システム研究所(ACSL、千葉市)だ。

 機体のサイズはA3用紙ほど。重量は1.6kgだ。壁面にぶつかっても壊れないよう周囲をガードした5つのプロペラで、秒速3mで飛行する。バッテリー1つで500mほど飛べる。バッテリーや基板は機体の中央に収納する。カメラは前方に2台。撮影用と操作用だ。LEDテープライトで照明を確保する。

■ 直径400mmの管路を飛行して映像を取得するドローン
管径400mmのモックアップ内を飛行し、水や砂の巻き上がりの影響を確認(写真:左は日経コンストラクション、右はNJS)
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 NJSは当初、市販のホビー向けドローンを使ってみたが、下水道管のような閉鎖空間では機体が巻き起こす風の影響でうまく飛べないことが分かった。そこで、ACSLに共同研究を申し込み、機体を一から設計。後方に補助用のプロペラを取り付けることで、安定飛行を実現した。

 操作は簡単。管きょの壁面にぶつかっても、姿勢や位置を戻す仕組みを取り入れたからだ。現状は手動で操作しなければならないが、将来は全自動化を目指す。マンホールの蓋を開けてドローンをセットすれば、自動で飛行・調査して地上に戻るイメージだ。NJSはビルの配管やNTTの洞道などにも適用できるとみる。

 開発を担当するNJS西部支社大阪総合事務所の稲垣裕亮アセットマネジメント部長は、「下水道管路の延長は47万kmだが、ほとんど点検できていない。安く簡単に点検する方法を考えていた」と話す。

 クローラー型の検査カメラだと、1日に点検できる距離が300~500mに限られる。組み立て作業などに人手と時間がかかるうえ、交通誘導員も複数配置しなければならない。検査カメラ自体も高価だ。「機体価格が10万円ほどのドローンなら消耗品の感覚で使える。調査市場を活性化する起爆剤になるのでは」(稲垣アセットマネジメント部長)。今後は直径200mmの管内を飛べるスマートフォン程度の大きさのドローンも開発する。

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