東京都品川区の私立美術館「原美術館」が2020年12月をもって閉館することを2018年11月22日に発表した。建築家・渡辺仁の設計により、実業家・原邦造の邸宅として1938年に竣工した建物を、1979 年に美術館として再生したものだ。閉館を決断した理由として「老朽化」や「バリアフリーの問題」を挙げている。閉館まであと2年。日経アーキテクチュアが2018年4月に発刊した書籍「プレモダン建築巡礼」に掲載した「原邦造邸(原美術館)」の記事で、その魅力を知っていただきたい。(ここまで宮沢 洋=日経 xTECH/日経アーキテクチュア、以下は磯 達雄=建築ジャーナリスト)

原美術館の閉館を伝えるお知らせ。2021年からは活動拠点を「ハラ ミュージアム アーク」(群馬県渋川市)に集約し、同館の名称を「原美術館 ARC」に改める(資料:原美術館のウェブサイトより)
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原邦造邸(原美術館)/思想を超えるスタイル

所在地=東京都品川区北品川4-7-25 設計=渡辺仁 竣工=1938年(昭和13年) 交通=JR品川駅から徒歩15分(写真:磯 達雄)
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 門を抜けると、モザイクタイルで覆われた建物が見えてくる。彫刻作品を横目に庭を歩いて、鮮やかな模様の大理石が庇を支える玄関へ。中に入ると丸柱が立つ玄関ホールで、その奥にある吹き抜けの部屋と、廊下の先にあるバナナ形にカーブした細長い部屋が、展示室となっている。

 階段を上がると、2階には小割りの展示室が並ぶ。それぞれに特徴を持った魅力的な展示空間だが、その容積は現代美術の展示には、少し小さいとの印象を持つかもしれない。それもそのはず、この原美術館の建物は、もともと個人の住宅として建てられたものだった。

 建て主は原邦造。戦前期に第百銀行や愛国生命など、数多くの会社で経営に携わった実業家だ。ただし原がこの家で暮らした期間はそれほど長くない。竣工して10年もたたないうちに、敗戦で進駐軍に接収されてしまうのだ。返還後はフィリピンやミャンマーの大使館だった時期もあったが、しばらくすると使われなくなり、美術館として公開される前は、10年あまり空き家として放っておかれていたという。

 現在、美術館として見どころとなっているのが、住宅だった頃にトイレや暗室だった小部屋を用いた常設のインスタレーションで、ジャン・ピエール・レイノー、宮島達男、須田悦弘、森村泰昌、奈良美智といった一流の現代美術家が、ここでしかできない展示を行っている。また磯崎新アトリエの設計で中庭側に増築されたカフェも人気だ。

(イラスト:宮沢 洋)
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