日経アーキテクチュアが4月23日に発刊した書籍「プレモダン建築巡礼」から、いくつかの記事をより抜いてご覧いただきます。今回は大正3年に竣工した東京駅丸の内駅舎。息子を相撲取りにさせようとしたほど相撲が大好きだったという建築家、辰野金吾が設計しました。その姿は、力士の土俵入りに似ているとも……。

所在地=東京都千代田区丸の内1-1-3 設計=辰野金吾 竣工=1914年(大正3年) 交通=JR東京駅下車(写真:磯 達雄)
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 ガイドに案内されながら観光客のグループがカメラを建物に向ける。ドームの中に入ると、足早に改札を抜けようとするビジネスパーソンに交じって、飽かずに天井の装飾を眺めている。2012年に改修を終えた東京駅の丸の内駅舎では、そんな光景が日常的に見られるようになった。

 乗車人数も増えた。改修前はJR東日本エリアの駅でランキング5位だったが、改修翌年には、新宿、池袋に次ぐ3位にまで上昇した。

 改修の見せ場は、何といっても戦災で失われたドーム屋根の復元だ。実は工事が行われる前までは、屋根はそのままでもいいのでは、と思っていた。自分にとってはあれこそが見慣れた東京駅だったし、開業当初のオリジナル・デザインよりも仮設屋根の状態の方が、期間として2倍以上も長くなっていた。これはこれで歴史的な価値があるはずだ。しかし現在、このように多くの人が建物に注目している様子を見ると、復元は大成功だったといえる。

 それに、よく見ていくと、単純に創建時に戻したわけではないことも分かる。基本方針としては、当初の状態のまま残っている箇所は保存し、戦災で失われた箇所は復元を行う。レンガの外壁は2階部までが保存で、3階部は復元だ。ただし、ファサードの中央南寄りにある換気塔のように、戦前に増築されていた部分をあえて残した箇所もある。

 また南北のドーム内部では、3階以上の仕上げやレリーフは当初の状態に復元したが、1~2階は現在の駅に求められる機能を満たすべく、新しくデザインし直している。構造上の要求から太くせざるを得なかった柱は、フルーティング(縦溝)を模したデザインを踏襲。床面には、戦後復興で設けたローマのパンテオンを模したドーム天井の見え方を、石張りのパターンに置き換えて用いている。

 過去から現在に至る100年間、すべての時代へのリスペクトが、この改修には感じられる。建築保存の方法として、ひとつの見本となる態度だ。

(イラスト:宮沢 洋)
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