5G(第5世代移動通信システム)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、自動運転など新たなデジタル技術が普及する2020年代、成長が続く中国市場において大量の半導体が消費されることは明らかである。この際、昨今取り沙汰されている国際関係の不測の事態に備え、中国のセットメーカーは、採用する半導体について輸入に頼らず、できるだけ中国で生産されたものを選ぶのは間違いない。調達方法の優先順位としては、(1)中国企業が作った中国製、(2)外国企業が作った中国製、(3)外国からの輸入品――という考え方が業界内で広がり始めている。

 中国に輸出している企業は、中国内生産している企業に比べて優先順位が下がることになる。では、どのようにして中国内生産に切り替えればよいのか。その選択肢となる一大プロジェクトが動き出した。

(出所:freeangle / PIXTA)

SMICの元経営者が率いる

 このプロジェクトの実施母体となる企業は芯恩(青島)集積電路有限公司(SiEn (Qingdao) Integrated Circuits Co., Ltd.)と言い、SMIC(Semiconductor Manufacturing International Corp.)の元経営者であるRichard R. Chang氏が率いる。

 現在、中国・山東省にある青島西海外新区において、半導体工場の建設が急ピッチで進んでいる。300mmおよび200mmのウエハーを使う半導体ICの生産ライン2棟を中核に、川上に当たる回路設計、デバイスファブリケーション、川下に当たるパッケージング/テスト、さらには実装・モジュール化の工程を担当する企業群を工場内に一気通貫でそろえる。これらの設備を生かし、近隣に本拠を構えるハイアールグループ(Haier Group)やハイセンスグループ(Hisense Group)を筆頭とした家電、通信機器、電気自動車メーカーなど向けに、半導体生産を一手に引き受けようとの考えだ。

 同氏はこの事業形態をCIDM(Commune Integrated Device Manufacturers:共同で垂直統合型の半導体生産を行う業態)と呼ぶ。大型コンピューター全盛期の富士通、NEC、日立製作所に代表される日本の半導体メーカーを手本とし、半導体の製造会社をコアに置き、設計会社、テスト/パッケージング会社、実装/モジュール会社と現地で協業し、「中国版IDM」を実現しようと取り組んでいる。