この5月、米配車サービス最大手のウーバーテクノロジーズが上場して、大きな話題となった。事前の予想では、時価総額は10兆円を見込むと見られていたが、5月11日の上場初日の終値換算では約700億ドル(約7兆7000億円)とやや下回る状況となっている。
それでも日本企業で言えばソニーの時価総額に匹敵するほどの大型銘柄になり、世界的なニュースと言える。
日本でも企業の上場は大きな意味を持つ。会社の株式が広く流通して、期待が高いと株価が上がる。そして新株を発行するなどして資金調達ができる。まさに企業の成長にとって上場は重要な手段なのである。日本企業の視点で言えば、時価総額で世界をリードするフェイスブックやアップルなどGAFAと呼ばれる大型勢力に対抗するためにも、多くの株主の支援が欠かせない。
大株主は日本銀行と従業員
ところが近年、日本の株式市場で上場企業を巡り、変化が起きていることをご存じだろうか。
先に触れたように上場企業と言えば外国人株主や機関投資家など世界中から資金を集めている印象がある。ところが実際は、日本の上場企業の最大の株主は日本銀行なのである。日本経済新聞社の推計では、日銀は上場企業の5割で大株主(上位10位以内の株主)になっており、日東電工やファナック、オムロンなどの筆頭株主になっているという。日本株を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をも上回る規模と見られる。アベノミクス政策により日銀が株式投資を増やした結果、大きな存在となっているのだ。
実は、日本企業の大株主として注目されるのは、日本銀行やGPIFといった公的機関ばかりではない。
上場企業の財務諸表を調べてみると、従業員持株会が大株主となっている企業もとても多い(下記の表を参照)。中には筆頭株主や、10%を超える保有率の会社もある。従業員持株会に加えて、創業者が上場後も大株主になっている会社も少なくなく、上場しているといえども株主は身内ばかりという実態も浮かび上がる。
社名 | 持ち株比率 | 大株主としての順位 |
---|---|---|
扶桑電通 | 19.59% | 1位 |
いであ | 12.44% | 1位 |
CRI・ミドルウエア | 12.27% | 2位 |
スペース | 11.08% | 1位 |
アルトナー | 9.78% | 2位 |
ほぼ日 | 8.73% | 5位 |
リンクアンドモチベーション | 6.36% | 3位 |
サイバーリンクス | 5.54% | 3位 |
もちろん創業者や従業員持株会が保有することには利点もある。仕事の成果が給与だけではなく、株式の配当や値上がりの形で表れるなど士気向上につながるからだ。
それでも、あくまで一般論として日銀や従業員持株会が大株主という現状を見ると、この先はどうなるのだろうという疑問も沸く。つまり日銀が今後も政策的に日本株を買い続ける保証はない。また従業員持株会は自社株を買う時もあれば売る時もある。仮に多くの株主が売りに出した時に、一体、誰が新しい株主になるのか。そして新たな株主を呼び込むために企業はどんな努力をしているのだろうか。