2018年に企業に破竹の勢いで浸透したソフトウエアと言えば、多くの人がRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)を挙げるだろう。既存のシステムに何ら手を加えることなく、2週間程度の期間でソフトウエアロボットを開発することで、あっと驚くほどの容易さで業務の効率化を成し遂げてしまう。評判が評判を呼び、既に大企業の80%以上が業種を問わず、トライアルを含め何らかの導入に踏みきったと言われる。その勢いは、人手不足に悩む中堅・中小企業にも及んでいる。中堅では過去半年の間に普及率がほとんどゼロ状態から30%へと一気に伸びたという。驚くような浸透の速度である。RPAの特徴を一口で言うなら導入における「スピード」。これが短期間での普及に寄与したことは間違いない。

 2019年4月から順次施行が始まった働き方改革関連法への対応も追い風と思われる。2019年もさぞかしと、大手RPAベンダー数社に話を聞いてみた。すると、初めのうち威勢のよい話題を振りまいていた担当者が次第にため息交じりになってくる。「大手は、思っていたよりも導入拡大に時間がかかるかもしれません」。ベンダー数社の話をまとめると、意外にも大企業におけるRPAの導入はさまざまな壁に直面しているのだという。どのベンダーに聞いても同様で、どうやらこれまでと違うステージに突入した雲行きである。

失望の崖に直面

 どのような壁か。まず挙げられるのが「2~3部署止まりの壁」。RPAを最初に入れようとする担当者はやる気満々で取り組むが、その先を引き継ぐ担当者の意欲を駆り立てるまでには、簡単にはつながっていかないのだという。

 次に、「高ROI業務から次の業務への壁」。RPAは最も導入効果の高い業務を選んで始めることが多い。最初の事例は当然ながら成果を得て喝采を浴びる。さらにいくつかの業務も狙い通りに結果を残す。だがやがて、RPAのライセンス料と手間に対してリターンが見合わなくなる状況が訪れる。当初の定型作業から非定型作業に適用先を広げようとする場合などは、導入効果を定量化するのも難しくなるだろう。そこに壁が立ちはだかる。

 もちろん、企業側も社内の推進体制を整備したり、RPAがより効果を発揮しやすいように業務プロセスを見直したりといった地ならしを進めてはいる。ただ、あるベンダーの見立てによると、大企業で自分の仕事を一部でもRPAのロボットに渡した従業員は、現時点では全体の2%程度だという。「20%くらいにまで広めたいのですが、実際にはまだまだ」とその担当者。別のベンダーの担当者は、「欧州でも企業全体の浸透には数年かかったと聞きますから、じっくり腰を据えて取り組みますよ」と、サポートの戦略転換をにじませる。

どんな期待の新技術もいったんは失望の崖を経験し、それを克服することによって本格普及への切符を手にする。ただ、RPAは新技術というよりも現場の悩みに対するソリューションであるから、そんな崖に直面することはあるのだろうかと思っていたが、実態はやはり簡単ではないようだ。

 話はこれで終わりではない。その先へ果敢に進もうとするRPA導入企業に、ある変化が起こっているというのである。ベンダーはRPA商品を浸透させることに心血を注いでいるが、ユーザー企業にとってRPA導入は目的ではなく手段である。また、RPAを社内で広く活用することが最終ゴールではない。当然、ベンダーもRPAツール一辺倒の提案では済まないと認識し始めている。そこに注目してみたい。

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