日経BP総研による「2019年・10の予測」の第3回目をお届けする。選んだ10のテーマは、どのテーマも既に変化の「兆し」は見えている。 2019年は、これらの「兆し」が「結実」へと向かい、評価が定まっていく年となるだろう。

【予測7】消費増税:省エネとキャッシュレスが加速

 消費税の歴史は混乱とともにあった。

 1989年、紆余曲折(うよきょくせつ)を経て竹下登内閣によって3%の消費税が導入された際には、1円硬貨不足でパニックになった。

 2014年の8%導入時には、4月の導入を前に住宅や耐久消費財の駆け込み需要が発生。増税前の駆け込みによって2013年度に着工した住宅数は前年度比で10%増え、反動減で2014年度は10%減った。駆け込み需要の刈り取りとその後の需要減に対応するために住宅業界では価格競争が激化し、住宅性能向上の議論が一時棚上げとなった。

 2019年10月、消費税が10%へと引き上げられたら、どんなことが起こるのか。

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 今回の増税による影響自体は、前回、前々回ほどは大きくはならない可能性が高い。前2回の教訓を踏まえ、すでに景気下支え策が相当、準備されているからだ。日本銀行は各種対策による補正効果を盛り込んだ実質的な影響をマイナス2.2兆円とみる。これは前回の8%増税時の4分の1程度だ。

立ち遅れる中小のキャッシュレス化を後押し

 今回の10%への増税は2度にわたり延期された。結果としてこれが政策的な準備期間を生み、日本の経済インフラ、住宅インフラのアキレスけんを克服するプラスの方向に働く可能性がありそうだ。増税対策として検討されている施策で注目するのは、増税2%分のポイント還元と、再開される住宅エコポイント制度である。この景気下支え策によって、中小企業を含めたキャッシュレス決済の進展や住宅の省エネ化が加速する可能性があるからだ。

 政府は消費税の引き上げに伴う消費の落ち込みを避けるため、中小の小売店で現金を使わずにキャッシュレス決済をすると、2%分をポイントとして還元する施策を導入予定である。デビットカードやQRコードなどによる決済も対象とする。ポイント還元制度の導入と並行して、今は現金決済しかできない小さな店舗のキャッシュレス決済を後押しするために、クレジットカード各社に対して加盟店手数料を引き下げる方向で要請を行う検討を進めている。

 日本では決済に占めるキャッシュレスの比率は2割にとどまる。韓国の9割、中国の6割はもとより、米国や欧州の4~5割より大幅に低く、デジタル経済化に向けたインフラの弱点とも言われている。特に中小小売店の導入が遅れている。経済産業省が2016年に実施した調査では、キャッシュレス決済を導入しない理由は「手数料が高い」が42%で最も多かった。政府は消費冷え込み緩和とキャッシュレス促進の両方を追う政策を打ち出したわけだ。

資産価値と健康リスク軽減を住宅省エネ化で

 また、住宅分野では、2015年度に実施した「住宅エコポイント」に近いものが検討されている。これは立ち遅れている住宅の省エネ化を後押しする狙いがある。住宅エコポイントは一定の省エネ基準を満たした一戸建て住宅やマンションの購入、窓や外壁の断熱改修に対してポイントを還元する仕組み。前回の省エネエコポイント制度では、新築購入に上限30万ポイント、断熱改修などの改修に30万ポイントを発行した。

 住宅・建築分野では2020年までの段階的な省エネ基準義務付けが検討されているが、住宅分野では対応が遅れ、いまだ省エネ対策を施していない住宅が全住宅ストックの約4割を占める。

 省エネ対策を施していない住宅はエネルギー効率が良くないだけにとどまらず、住宅の資産価値維持を難しくする。さらに、居住者の健康、特に急増する単身高齢世帯のヒートショック事故などにつながる危険を内包する。

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 消費増税を契機として、日本が国際的に遅れているキャッシュレス、住宅省エネといった施策がどのくらい加速するのか、2019年はこれを注視したい。