今回から3回にわたって、日経BP総研による「2019年・10の予測」をお届けする。選んだ10のテーマは、どのテーマも既に変化の「兆し」は見えている。 2019年は、これらの「兆し」が「結実」へと向かい、評価が定まっていく年となるだろう。

【予測1】
オンライン診療・アプリ診療:医療のオンライン化が加速

 衝撃的な数字がある。日本の医療費の膨張だ。日医総研が予測する2030年の医療費は実に2015年を10兆円近く上回り、50兆円を超える。ところが、医療費の主たる担い手である65歳以下の就業人口は減少し、その負担は1.5倍にもなる。

[画像のクリックで拡大表示]

 そこで今、明確な日本の政策目標になったのが、健康寿命の延伸と生涯現役を目指す雇用、そして社会保障の変革だ。日本経済新聞の9月4日の一面トップには「『生涯現役』へ3年で改革」という見出しが安倍晋三首相のインタビューをもとに掲載された。

 この健康寿命の延伸に効果的なのが、オンライン診療や治療アプリだ。従来の外来診療は、診察と診察の間には、医師と患者の間のコミュニケーションはほとんどなかったが、オンライン化やアプリでは、その間のモニタリングやコミュニケーションが可能。医師のアドバイスやアプリのアドバイスで、患者の行動をより治りやすくする方向に変えることができる。日常の食事や運動についてもきめ細かく指導ができるようになる。

デジタル&ICT化で行動変容が実現、開発容易に

 2018年春、オンライン診療に初めて正式な保険点数がついた。専用アプリとシステム「YaDoc(ヤードック)」を開発したインテグリティ・ヘルスケア代表取締役会長の武藤真祐医師は「薬が効くかどうかが重要だったかつての感染症治療中心の医療から、生活習慣病中心の医療に変わった。治療は患者の行動変容が主眼。患者に寄り添うICTによるオンライン診療は行動変容に寄与する」と話す。

 また2019年中には、禁煙治療アプリ「CureApp禁煙」が保険医療のツールとして承認される見通しだ。

 開発に当たるキュア・アップ代表取締役社長の佐竹晃太医師は、「禁煙治療では、ニコチンに対する身体的依存を薬でケアする。薬でできない精神的な依存に対処し、禁煙を続けられるよう治療アプリを開発した」と話す。まさに行動を変えるわけだ。同社は食習慣などの行動変容が必要なNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の治療アプリも開発中だ。

[画像のクリックで拡大表示]

医師のアイデアをベースに異業種も参加、イノベーションが加速

 デジタル化、IT化というと人工知能(AI)なのかと思う人もいるかもしれないが、「既存の医師のノウハウ、診療やケアのコツをプログラム化したもの」と佐竹医師。だが、その効果は時に医薬品の新薬並みだという。「米国の糖尿病治療アプリBlueStarが、私が開発を始めたきっかけです。糖尿病の指標の改善度は、新薬並みだったのです」(佐竹医師)。

 医療分野の新薬を開発する場合、有効な分子を探して、ときには3万分1の可能性にかけることもある。それに対して、治療アプリについては既存の医師の行動変容へのノウハウを集約することで開発が可能で、開発費も医薬品に比べるとかなり低くなる。

 一方、患者の行動変容をよりよく促すために、ゲーム要素を取り入れたゲーミフィケーションやコミュニケーションの要素も必要だ。運動支援アプリの開発では、アステラス製薬が、ヘルスケア領域では新顔のバンダイナムコと提携し、共同開発も始まる。2019年は、医療のオンライン化とアプリ化が、ヘルスケアビジネスのプレーヤー交代を加速させそうだ。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら