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「はい。XXXX理髪店です」
「あ、えーと、来週月曜日の午前10時に予約したいんですが」
「あいにく10時は、もう予約でいっぱいです。12時か午後2時ではいかがですか?」
「そうですか。じゃ、12時でお願いします」
「来週月曜日の12時ですね。では、お名前と連絡先を承ります」
・・・・

 人工知能(AI)と人、あるいはAI同士が、電話を通じ、こうしてインタラクティブにやり取りする。そんな世界が近づいている。実際、2018年5月8日に米国で始まった米グーグル(Google)の開発者会議「Google I/O」では、AIが理髪店に電話し、予約をとるデモンストレーションが行われた。自然言語理解、深層学習、音声合成を組み合わせたGoogle Duplex技術に基づいた、AIスピーカーの「Googleアシスタント」のデモである。

 このデモンストレーションに驚かされた人は少なくないだろう。実際のところ、この機能が、どれほど多くの人にとって魅力的か、どれほど多くの場面で私たちの生活の役に立つかは、何ともいえない。すぐに思いつく活用シーンは、夜間や早朝など、その場、その時間帯では予約をとれないときに、AIスピーカーに予約を指示しておくような使い方だが、このほかにそれほど利用シーンが広がるか、疑問に感じなくはない。それでも、この仕組みが私たちに新しい体験、新しい価値を提供してくれることは間違いない。

 Google I/Oに先立つこと1週間前には、米フェイスブック(Facebook)が開発者会議「F8」の場で、35億件もの一般入手可能な写真のデータセットに対し、人間による注釈の代わりにそれらの写真に画像認識システムが自動的にハッシュタグを付ける訓練に成功したことを明らかにした。FacebookでのAR(現実拡張)/VR(仮想現実)利用機能にも進展があった。

 これらの新技術、新機能、新サービスを支えるのは、もちろん、各社の研究開発だ。とりわけGoogleの研究開発投資は膨大である。Strategy&の調査結果によると2017年の同社の研究開発投資の実績は139億ドル(約1兆5000億円)に上る(表1)。それに比べると小さいとはいえ、Facebookも59億ドル(6500億円)を投じている。2017年の研究開発投資で世界トップに躍り出た米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)の研究開発投資額は161億ドル(1兆7700億円)である。これに米アップル(Apple)を加えた、いわゆるGAFA 4社で見ると、研究開発投資額は460億ドル(約5兆円)に達する。日本のトップがトヨタ自動車の約1兆円だから、この4社でざっとトヨタ自動車5社分ということになる。

表1 2017年調査 R&D支出上位20社
(出所:Strategy& 「2017年グローバル・ イノベーション調査結果概要」)
順位(2017)順位(2016)順位の変化社名本社所在地業種R&D支出(10億ドル)売上高(10億ドル)対売上高R&D支出比率(%)
13+2アマゾン北米ソフトウエア・インターネット16.113611.8
24+2アルファベット北米ソフトウエア・インターネット13.990.315.5
35+2インテル北米コンピュータ・エレクトロニクス12.759.421.5
42-2サムソンその他コンピュータ・エレクトロニクス12.7167.77.6
51-4ファルクスワーゲン欧州自動車12.1229.45.3
660マイクロソフト北米ソフトウエア・インターネット1285.314.1
770ロシュ欧州ヘルスケア11.451.821.9
814+6メルク・アンド・カンパニー北米ヘルスケア10.139.825.4
911+2アップル北米コンピュータ・エレクトロニクス10215.64.7
108-2ノバルティス欧州ヘルスケア9.649.419.4

 研究開発だけではない。各社、とりわけGoogleはM&Aにも積極的だ。特に設立から5年も経過していない、短期のものでは設立からわずか1カ月しかたっていないようなスタートアップ企業を、次から次へと買収している。この数年のトレンドの一つはAIベンチャーの買収だが、それ以外にも音声、VR、開発環境など領域は各方面に及ぶ。Googleは、こうして得た技術を発展させ、さらなる新しい価値を生み出し続けている。