2016年4月の熊本地震で被害を受けた熊本城天守閣が、制振ダンパーを備えてよみがえる。その外観が再び姿を表すのは19年春。18年3月28日、熊本市は天守閣の復旧を手始めに、20年かけて城郭全体を復旧する基本計画を決定した。

 「なぜ、あれほどきちんと耐えたのか、不思議なくらい。理屈になっていないが、つくった方々の心意気が支えたのかと思うくらいだ」。熊本市が設置した熊本城復旧基本計画策定委員会(委員長:蓑茂壽太郎・熊本市都市政策研究所所長)の議事録には、委員の1人で構造の専門家である和田章・東京工業大学名誉教授が述べた、そんな所見が記されている。

 小高い丘の上に立つ熊本城天守閣が17年5月に養生ネットに覆われてから、間もなく1年がたつ〔写真1〕。

〔写真1〕仮設足場に覆われた大天守閣
本丸御殿側から見た現在の大天守閣。大天守閣は現在、仮設足場と養生ネットに覆われている。ネットの奥では2019年の外観復旧完了を目指して工事が進む。元施工を担当した大林組が復旧の設計・施工も担当している(写真:池谷 和浩)
[画像のクリックで拡大表示]

 熊本城は加藤清正が築いた城だ。1607年に完成したが、天守閣が1877年の西南戦争の際に焼失。1960年に主として鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造で再建された。以来50年以上、熊本のシンボルとして親しまれてきた。2016年4月の熊本地震で大量の瓦が落下した姿は、多くの市民にショックを与えた〔写真2〕。

〔写真2〕被災直後の大小天守閣
揺れで多くの瓦が落ち、足元の石垣も崩れた。内部調査により、大天守閣最上階の脚部が損壊し、耐震性がほとんど損なわれたことも判明した(写真:熊本市)
[画像のクリックで拡大表示]

 天守閣は2棟から成り、大天守閣は地下1階・地上6階建て、高さ約30mで、延べ面積は1759m2。小天守閣は地下1階・地上4階建て、高さ約20mで、延べ面積は1309m2。大小の天守閣が南北に並び、中央を「続櫓(つづきやぐら)」で結んでいる。05年に実施した耐震診断で、Is値(構造耐震指標)が0.3台しかないことが判明しており、耐震改修を予定していたが、熊本地震には間に合わなかった。

 市は現在、天守閣を「復興のシンボル」と位置付け、耐震改修を含む復旧工事を進めている。四面の外観からまず復旧させる方針で、市は「早ければ19年春に大天守閣の養生ネットを外せる」(熊本城総合事務所の濵田清美副所長)と説明している。

 16年12月に技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)による公募型プロポーザルを実施し、1960年の再建を担った大林組を選定した。事業費は約72億円。被災した城郭施設のなかで、最も早い復旧だ〔図1、2〕。

〔図1〕制振装置を導入し大幅に性能向上
天守閣改修工事の概要。大小天守閣への制振装置の導入、瓦ぶき屋根の高耐震化、小天守閣1階の支持形式変更などが柱だ。事業費は総額約72億円(資料:大林組の資料に日経アーキテクチュアが追記)
[画像のクリックで拡大表示]
〔図2〕5年以内の短期計画と20年かける中期計画に切り分け
熊本城復旧基本計画の工程表。まず天守閣エリアを優先して復旧させる。重要文化財に指定された遺構は具体的な工事方法が決まっていない部分が多く、いずれも5年以上かかる予定だ(資料:熊本市)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は申し込み初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら