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 「日本の大谷翔平は、米国のショーヘイ・オオタニになった」(米ロサンゼルス・タイムズ、4月6日電子版)

 米メジャーリーグ(大リーグ)開幕から約10日間で、打者としては本拠地で3戦連続の本塁打、投手としては7回無失点12奪三振を含む2勝と、大活躍を見せている“リアル二刀流”、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手。春のキャンプでは結果を出せず、米メディアからは実力を疑問視する声が相次いだが、開幕後の活躍で全米の野球ファンの間でも一躍注目される存在になっている。メジャーリーグの公式サイトMLB.comや、スポーツ専門放送局ESPNでも連日トップクラスの扱いだ。

ロサンゼルス・エンゼルスの“リアル二刀流”、大谷翔平選手。米国の野球ファンにも大注目の存在だ
(写真:アフロ)
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MLBの技術会社が生んだボール・選手追跡技術

 投手としてストレートの平均球速は155.2km/時(ボールが1回転する間に縫い目が4回通過する4シームの場合)(4月18日時点)、4月3日の試合の第4打席で放った中前安打の打球速度は181.69km/時で同日時点で今季球団最速――。大谷選手の凄さをダイレクトに伝えるのが、大リーグ機構(MLB)が2015年に全30球団のスタジアムに導入し、運用する「STATCAST(スタットキャスト)」。ボールや選手の動きを追跡してデータ化するトラッキングシステムである。

STATCASTが取得できるデータの一例。投球の速度やリリースポイント、回転数、変化量などを計測。それらのデータを組み合わせることで、バッターがそのボールをどれだけのスピードに感じているのかという「体感速度」も割り出すことができる。「スポーツアナリティクスジャパン2017」での、元MLBAM CTOのジョー・インゼリーロ氏の講演から
(図:BAMTECH Media)
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 大リーグの放送やハイライト映像では、STATCASTのデータが頻繁に使われ、データ(スタッツ)が好きなファンを楽しませている。ちなみにSTATCASTは米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)のクラウドサービス「AWS」を活用しており、STATCASTのデータが表示される際にはAWSのロゴが画面に現れる。

 このトラッキングシステムを開発したのが、MLBが2000年に設立したMLBAM(Major League Baseball Advanced Media)だ。同社は、「デジタル時代の野球ビジネスを実現するための技術会社を作るべき」というMLBトップの考えをもとに誕生した。

 もっとも、MLBAM自身が追跡技術そのものを開発したわけではない。STATCASTは、「TrackMan(トラックマン)」(デンマークTRACKMAN)と「TRACAB(トラキャブ)」(米ChyronHego)という2つのトラッキングシステムを組み合わせたものである。

 TrackManは、ドップラー効果を利用してミサイルの弾道を追尾する軍事用レーダーを応用し、投球の速度や回転数、変化量、さらに打球の速度や打ち出し角度、ホームランの推定飛距離などを算出する。バックネット後方に1台設置され、毎秒4万8000個のデータを取得できる。

軍事用レーダーを応用し、投球や打球のデータを取得するTrackMan。バックネット後方に設置される。写真は千葉ロッテマリーンズの本拠地「ZOZO マリンスタジアム」に設置されているもの
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