FinTech革命によって今までにない斬新なサービスが登場し、利用者が具体的なメリットを享受できる段階に来ている。一方で2018年1月には、革命の旗手と目されてきた仮想通貨取引所の1社が巨額の流出事件を起こした。「イノベーション」と「ルール」のバランスをとる難しさを露呈した格好だ。ここ数年続いてきた“熱狂”に冷や水も浴びせた。FinTech革命はどこへ向かうのか。金融業界の論客たちがその行方を占う。

 2018年はますますFinTech分野が拡大し、他領域との融合やグローバル企業の日本参入が続く1年になると見ている。

丸山 弘毅(まるやま・ひろき)Fintech協会 代表理事
慶應義塾大学卒業後、ジェーシービー入社。リスク分析・マーケティングなどのビッグデータ関連業務、新事業開発・ M&A業務を担当。2006年インフキュリオン・グループを創業。決済・FinTech関連の新規事業立ち上げ支援で多 くの実績を挙げる。また、スマホ決済ベンチャーのLink Processing、自動貯金サービスfinbee、CardWave出版な ど、キャッシュレス化に向けた様々な事業を展開。2015年に一般社団法人Fintech協会を設立、代表理事に就任。
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 例えば地域経済圏の変革については、多様な動きが始まっている。銀行法改正の影響もあり、地方金融機関における地域密着型サービスの検討や、自治体・地域スタートアップ企業の活動も活発になってきた。「インバウンド対応」「地域電子通貨」「クラウド会計の導入」「AIによる企業融資」など、単発的ながら多くの取り組みがある。今後これらのサービスを有機的に結びつけていくことも重要なFintech協会の活動になると見ている。

 中でも注目しているのが、地域企業を起点とした経済圏の勃興だ。例えばHR分野とFinTechを融合させ、給与を早期に支払うサービスが増えている。一部を地域通貨としてプレミアムを乗せて支払うといったこともFinTechを活用すれば実現可能になる。地域通貨によって、金融機関は企業や加盟店の決済業務や資金サイクルを効率化できるし、データが取得できるので取引状況から将来を予測して融資を実行するといったサービスも提供可能になる。お金が循環すればするほど、そこで発生するデータを使ってさらに経済効率を高める施策が打ち出しやすくなる。

 Fintech協会では、地域での活動や自治体との協力を増やす予定で、特区構想も利用しながら成功事例を生み出していきたい。

ICOが生む「コミュニティ」に注目

 仮想通貨やICO(Initial Coin Offering)については、セキュリティや利用者保護がより重視され、環境整備やさらなる自主規制が求められている。特に今後、ICOについては大きく広がると見ている。こうした動きを踏まえてFintech協会ではキャピタルマーケッツ分科会を発足させた。グローバル事例を含めてICOの本質を見極めながら、発展に向けた活動を始めている。

 特に注目しているのは小さな経済圏、つまりコミュニティを発展させていく活動だ。厳密にはICOという表現よりも、デジタルトークンによる証憑や会員権の発行についてである。企業による資金調達用途としてのICOにばかり注目されているが、実はクラウドファンディングに近い要素を持つトークンセールには大きな可能性がある。トークンを使うことによって、自治体が観光資源を生かして優待を付けた地域手形を発行するといったアイデアや、アーティストやアニメなどのファンクラブのような権利を売買するといったアイデアが実現可能になる。

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