人工知能(AI)を活用するシステムを円滑に開発し、さらにビジネスの成果に結びつける鍵は何か。AIシステムの構築を手掛けるIT企業は、「いかに効果的なKPI(重要業績評価指標)を設定するかだ」(ブレインパッドの筧直之アナリティクスサービス本部副本部長兼営業部長)と口をそろえる。

 実際、適切なKPIを設定したことでAIシステムの開発が円滑に進み、着実なビジネスの成果を確実にしている企業がある。送変電設備の運用を手掛ける東京電力パワーグリッドだ。

 同社は送電線の異常を深層学習で検出するシステムを、ITコンサルティングのテクノスデータサイエンス・エンジニアリング(TDSE)と共同で開発し、2018年4月に稼働させる。深層学習の対象にした作業は、ヘリコプターなどで撮影した動画データを基に、軽微な損傷や異物の付着といった異常を見つけ出すもの。これまでは熟練した作業者が動画を10分の1のスピードでスロー再生し、年間当たり約1330時間(2016年度実績)をかけて検証していた。

 AIが異常を見落とすと、将来的には事故につながりかねない。それだけに仮に人手の作業をすべて置き換えようとすれば、高い精度を要求したくなりそうだ。

 しかし、東京電力パワーグリッドの坂本吉男工務部保全高度化推進グループ送電担当(課長)はそうは考えなかった。異常を見つけ出す作業時間のほとんどは、正常な箇所を見ている時間である。AIの精度が多少甘くても、正常な箇所を見る時間の大半をAIによって代替できれば利用価値があると判断した。

業務時間の削減をKPIに設定

 坂本氏は「当初は業務時間の50%減、将来的には80%減」というビジネス上の効果を基にしたKPIを設定した。このようなビジネス上の効果を基にしたKPIであれば、AIの精度をやみくもに追求せずに済む。その分、AIシステムを開発しやすくなる。

 実際にシステム開発で、AIの間違いを許容する余地ができたと東京電力パワーグリッドの坂本氏は振り返る。具体的には送電線の異常を発見するという目的と照らし合わせ、正常な送電線を異常と診断する「誤判定」をある程度許容した。「誤判定のチェックに多少の人手をかけても、十分な業務時間の短縮効果を得られる」(坂本氏)。一方で異常の見落としは5%以内と、誤判定よりも高い精度を目標に設定した。

ビジネス上の効果を基にKPIを設定
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