1984年(昭和59年)、東京・世田谷で電話ケーブルの火災が発生、銀行業務が停止した。企業はネットワークのバックアップ体制の見直しに迫られた。Macintoshが登場し、PCのGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)時代が始まった年でもある。

東京・世田谷の通信ケーブル火災。地下から煙が猛烈に噴き上げている
写真:共同通信
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 年初に日経平均株価が初めて1万円を突破するなど好景気にわき、電話網で画像やデータをやり取りする「キャプテンシステム」の商用サービスが始まるなどニューメディア時代の到来を予感させた1984年。ある事件が11月16日に東京都内で起こった。「世田谷ケーブル火災」だ。

火災で銀行業務がストップ

 火災が発生したのは日本電信電話公社(電電公社、現NTTグループ)の世田谷電話局前にある地下ケーブルトンネルの内部だ。作業員がバーナーを使って作業していたところケーブルに引火し、大規模な火災を引き起こした。約8万9000の電話回線が不通になった。11月25日に完全復旧するまでに9日間を要した。

 火災の影響は大手企業にも及んだ。世田谷区にコンピュータセンターを持つ大和銀行(現りそな銀行)と三菱銀行(現三菱UFJ銀行)のほぼ全ての店舗でCD(現金自動支払い機)やオンライン端末が使えなくなった。

 両行はコンピュータセンターに待機系ホスト機を置き、ネットワークの予備回線も確保していた。しかし、通常回線と予備回線のどちらも火災が起こったトンネルを使っていたため、バックアップが機能しなかった。

 通信ケーブルというインフラが焼失した事件を契機に、大手企業はバックアップ体制の見直しを迫られた。大和銀行はその後、通常回線と予備回線が異なるトンネルを通るよう、回線の接続先の電話局を変える策を講じた。

IT事業に乗り出したAT&T

 通信サービスの自由化を見据え、1985年4月に民営化を控えていた電電公社にとって、ケーブル火災は痛手となった。1984年にはもう1つ、電電公社の先行きに影響を与える出来事が起こった。米AT&T(米国電話電信会社)の分割・再編だ。

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