2010年(平成22年)、東京証券取引所(現日本取引所グループ)の次世代株式売買システム「arrowhead」が稼働、欧米の証券取引所に肩を並べる高速システムが誕生した。米アップルが「iPad」を発表し、タブレット市場を切り開いた年でもある。

東京証券取引所で行われた「arrowhead」稼働記念セレモニーの様子
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 小惑星探査機「はやぶさ」がエンジンや通信機器の不具合といった困難を乗り越えて7年に及ぶ宇宙の旅から帰還し、歓喜に沸いた2010年。東証が苦難の末、次世代株式売買システムのarrowheadを稼働させた。

 この年はアップルのタブレットであるiPadやAndroid OSを搭載したスマートフォンなどが相次ぎ登場し、一般家庭と企業に浸透し始めた。「LTE(Long Term Evolution)」などの新たな通信規格や新しいWeb 開発言語「HTML5」も話題になった。

失敗を乗り越え、ついに完成

 東証のarrowheadが稼働したのは1月4日だ。売買注文に1000分の2秒で応答し、処理速度を旧システムの1000倍以上に引き上げた。年初の取引開始を祝う大発会で、同社の深山浩永常務執行役員(当時)は「新システムは超高速になったが、手締めは普通の速さで」と音頭を取り、笑いを誘った。

 arrowheadを稼働させるまでに、東証は度重なる失敗と苦難を味わってきた。稼働の5年前の2005年11月には、システム障害のため全株式銘柄を取引停止にする前代未聞の事態を引き起こした。同年12月には東証のシステムの不具合によりジェイコム(現ライク)株の誤発注を取り消せず、みずほ証券が約400億円の損害を負った。翌2006年1月には「ライブドア・ショック」に伴う取引量の急増にシステムが耐えられず、取引を打ち切る事態を招いた。

 東証は株式売買システムを抜本的に改良すると決定。2006年2月にNTTデータ出身の鈴木義伯氏をCIO(最高情報責任者)に招き、arrowheadの開発を委ねた。日経コンピュータは2010年2月17日号で東証の「発注力強化」に挑んだ4年間に迫る特集を組んだ。CIOとして重責を果たした鈴木氏は「世界で最先端のシステムの開発に携わることができたし、これまで考えてきた理想を実現できた。技術者冥利に尽きる」と実感を込めて振り返った。

 東証は5年後の2015年9月に後継となる新arrowheadを稼働。注文応答時間を500マイクロ秒未満へと縮めた。

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