「ウチのIT職場、事務作業がやたら多くて、貴重な時間が奪われるんだよね」「社内の報告書や説明資料作りばっかりでさ」「設計書を作成しているよりも稟議書の記入欄を埋めている時間のほうが長いよ」──。筆者の経験では、IT職場で働く社員のモチベーションや生産性が著しく低い会社では大抵、事務作業が「静かにかなりの悪さをしている」ケースがほとんどだ。

 「会社なんだから、事務作業はこなして当然でしょ」。そう言う人はもちろん、いる。確かにその通りだ。

 しかしである。私にしてみれば、はっきり言ってその「やって当たり前」という感覚こそが、IT職場のモチベーションや生産性の向上の足を引っ張っていると思っている。

 批判を恐れず、率直に言おう。IT職場からは事務作業をトットとなくしてしまったほうがいい。事務作業まみれのIT職場は、誰も幸せにならない。

面倒な事務作業がエンジニアのやる気を奪う

 日々事務作業に追われ、しかも手続きが非常に煩雑。ありがちなのは「わざわざ手書きすることを求める」「管理職のはんこリレーの嵐」「頻繁なフォーマット変更」。特に申請書や稟議書の類は、作業が実に面倒くさく、時間もかかる。

 人は面倒に感じるとどうなるか。仕事が雑になる。書類の作成でいえば、記入の抜けや漏れが多発する。

 当然、書類を提出しても差し戻される。その結果、事務作業がなかなか手離れしない。やりたくもない事務作業に、延々と付き合わされることになる。これがエンジニアの熱量を著しく下げる。本来の業務に集中できないのだから、やる気がなくなるのは理解できる。

 悪いことに、こうした負の流れは社員個人の問題では終わらない。事務部門とIT職場という組織の関係をひどく悪化させる。事務部門は「こんな簡単な作業がどうしてできないのか?なぜ間違えるの?」と感じている。一方、エンジニアは「現場の忙しさを分かっていないんだろ。書類は黙って受け取ってくれよ。不備があるなら、そっちで直してくれればいいじゃないか」と思っているわけだ。お互いをののしり合っている。

 同じ会社で働く社員同士なのだから、本来は協力し合わなければいけない。ところが必ずと言っていいほど、事務部門とIT職場の対立構造に発展してしまう。

 この問題は何もIT職場に限ったことではない。間接部門と事業部門、本社と現場という関係にも広く共通していえることだ。

 こういう状態に陥ると、社内で何が起きるか。お互いをリスペクトしなくなる。

 相手の職場をよく見ようともせずに、事務部門は「悪気なく」現場の事務作業を増やしていく。改善しよう、手間を減らそうという方向には目がいかない。相手に関心がないのだから当然だ。

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