都内のIT企業に勤めるSさん。このたび転職を決意し、職場の上司に会社を辞める意向を申し出た。口頭では受け入れられ、Sさんは上司から会社に退職届を出すように指示された。ところが……。

 「退職届は手書きで出すようにと言われた。直筆の署名が必要というのは理解できる。でも全文手書きで提出する必要性が全く分からない」

 それでも仕方なく、手書きの退職届を出したSさん。だが悲劇は続く。手書きの文面に対して、3回も書き直しをさせられたのだ。会社を辞めるというのに、最後の最後まで面倒極まりない。

 「てにをは」をチェックされ、書き直してと差し戻される。そのたびにゼロから手書きで清書する羽目に。この話、私には、IT職場で日々繰り広げられている手書き文化を象徴する出来事に思えてならない。

 書き直しを求めるのは法的な側面からなのか、あるいは単なる嫌がらせなのか。いずれにしろ、退職届にその会社なりの理想形があるのなら、規定のフォーマットを会社があらかじめ用意しておけばいいだけのこと。社員は書面にサインするだけでいいし、実際そのように運用している会社がある。

 社員の退職手続きを邪魔しているというのなら、それはマネジメントとしてあまりに幼稚過ぎる。それで辞意を覆すとでも思っているのだろうか。私には理解できない。

 気分悪く社員を退職させたところで、誰も得をしない。その会社の評判を落とすだけ。そのことに気付いていないのだろうか。

手書きの「ぬくもり」が必要なの?

 手書きを求められるのは、退職届に限った話ではない。こうした会社では新卒や中途の採用など、入社時の選考プロセスでも同様に、謎の慣習がいまだに残っていることが多い。

 しかもIT企業やIT職場を名乗っていながら、手書きの履歴書や職務経歴書を要求してくる。すると入社希望者は毎回ゼロから、手書きの書類を作らなければならない。1文字でも間違えたらゲームオーバー。顔写真をズレて貼ってしまっても、そこで試合終了。書き直しになる。

手書きの慣習が残るIT職場の問題地図
(出所:あまねキャリア工房)
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