ものづくり、建設、ITの各業界において世間を大きく騒がせた大事故やトラブルを受け、企業の取り組みや制度・ルールはいかに変わったのか。過去の事故・トラブルは今、どのような形で生かされているのか。世間を騒がせた重大な事故・トラブルの教訓とは――。専門記者が徹底的に掘り下げるとともに未来を展望する。
 今回(第3回)も、前回までに引き続き「性善説か性悪説か」がテーマである。IT技術者が引き起こしたベネッセコーポレーションの情報漏洩事件などを基に、時代の変遷とともに品質に対する姿勢や技術者の誇りがどう変化したかを議論した。

参加者 浅野祐一=日経 xTECH 建設 編集長/日経ホームビルダー編集長
吉田 勝=日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長
中山 力=日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長
井上英明=日経 xTECH副編集長/日経コンピュータ副編集長
司会進行 大石基之=日経 xTECH編集長
戸川尚樹=日経 xTECH IT 編集長

――(前回に)データ偽装の対策として、データを自動的に記録する「自動化」が挙がりました。工場にセンサーを多数導入する「スマートファクトリー」が広がるとデータ偽装問題を完璧に防げるようになりますか。

中山 力
日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長(写真:加藤 康)

中山理想的なスマートファクトリーを実現できれば、その可能性はあります。しかし、特に国内の工場に対する投資規模が非常に小さいので、スマートファクトリーそのものがなかなか広がらないという面もあります。

吉田スマートファクトリーの主な目的はコスト削減と生産性向上で、声高に品質向上を掲げている企業は少ない印象です。

中山ただ、センサーメーカーの担当者が、ここ数カ月は検査装置の受注が絶好調だと言っていました。一連のデータ偽装問題で新規導入を検討した企業が多いのかもしれません。ただ問題を起こしていない会社が何億円もかけて抜本的に対策するかというと疑問ですね。問題を起こした神戸製鋼所や三菱マテリアルなどは必須の取り組みになるでしょうが。

吉田 勝
日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長(写真:加藤 康)

吉田センサーを導入すれば確かにトレーサビリティーを高められるので、品質向上に寄与します。しかし、センサーで集めたデータを利用してシステマチックに品質向上につなげようとすると、かなり大がかりな仕組みが必要です。

――そうなるとデータ偽装問題はこれからも起こり得るということですか。

中山ありうるでしょう。現に2018年に入ってから旭硝子が子会社での品質不正を公表しましたし、三菱マテリアルグループでも新たな問題が判明しました。ただ、(第1回でも触れたように)産業界は「民民で話がつけば公表しない」というスタンスなので、当事者同士で話がつく限り公表しないでしょうね。

――データ偽装が死亡事故につながるような最悪のケースは出てくるのでしょうか。

中山現時点では、その可能性は低いように思います。最終製品になるまでにチェックポイントが大量にあるからです。データ偽装の結果、素材に問題があっても、部品メーカーや完成品メーカーが何重にもチェックする。それを全てくぐり抜けるケースはほとんどないからです。

 製品品質の責任は、基本的に最終製品メーカーが負います。その観点からすると、発注した仕様通りの部品が納められなかったからといって、最終製品メーカーに「責任はない」とは言えません。

――なるほど。ただ、データ偽装によって、タカタのエアバッグ破裂事故や(第2回で触れた)三菱自動車の大型車タイヤ脱落事故の問題のように、死に直結するような重大事故がこれからも日本企業で起こるのではないかという不安は残ります。データ偽装は死亡事故に直結しにくいという点について、様々な角度から専門家が議論して広めていくことが必要と言えます。

中山事故が起こったとき、その原因が部材の品質不良や欠陥だけに起因すると判断するのはなかなか難しいです。ただタカタの場合、最終製品に相当近いサプライヤーだったことと、リコール対応や情報開示が不十分だったこともあり、大きな騒ぎになりました。

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