省エネ・健康ニーズで住宅・建築産業が変わりつつある。連載第7回は、4月9日発行予定の書籍「キーワードでわかる 都市・建築2.0」から、環境・エネルギー分野の8つの注目キーワードを取り上げる。

 ゼロエネを目指す建築物の性能向上が急加速してきたが、2018年は普及促進のフェーズが転換期を迎えそうだ。国の促進策は「健康政策」との連動を図る方向にシフトし始めている。また「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)に基づいて17年4月から運用が始まった省エネ適判は、今後の適用対象拡大を視野に、運用状況の検証も並行して進む。

 ニーズを見越した建材・設備の動きも活発だ。住宅を筆頭に小規模建築での採用拡大に力を入れる蓄電設備、省エネ効果だけでなくデザインにも貢献する進化系LEDなど、開発の方向性に広がりを見せる。こうした動向は、IoT住宅の取り組みとも直結。最近話題の「AIスピーカー」との連携なども、見逃せない動きだ。

 建築物の認証制度では、環境面に加えて「利用者の健康への貢献」を重要な評価項目にするWELL認証に注目が集まる。国内初の認証例も誕生したばかり。そのほか、投資行動で環境配慮などの非財務情報を判断基準に加えるESG投資や、ストックビジネスの新スキーム「サステナビリティ・リノベーション」といったワードも見逃せない。

ゼロエネ(Zero energy)─「健康政策」へのシフトが加速

 高断熱化などによる省エネルギー化と太陽光発電を中心にした“創エネ”で、年間の消費エネルギー量を正味でゼロ以下に──。ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)やネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)の普及促進で、2018年度は重要な転換点になりそうだ。

 ZEH〔写真1〕について、経済産業省(資源エネルギー庁)が15年度にまとめたロードマップは、20年までに新築戸建て住宅の過半数のZEH化を目標に掲げる。後半戦に入る18年度は、同省と国土交通省、環境省がそれぞれ役割を分担して連携する形に整理される見通しだ。

〔写真1〕ZEH基準を満たした豊田保之氏設計の「ならやまの家」(奈良市)は、土壁の蓄熱性を生かした住宅例だ(撮影:生田 将人)
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 まず経産省は、従来より高いスペックのいわば「上位ZEH」や、「中高層集合住宅向けのZEH」の制度化に乗り出す。ZEHビルダーの登録制度は継続して担い、新たに登録ビルダーの評価制度も設ける方針だ。

 環境省は、経産省から従来の補助制度などの運用を引き継ぐとともに、新たな「低層集合住宅向けZEH」の制度化に乗り出す。経産省とともに、建て主向けの広報活動なども担う。また国交省は、両省の取り組みと連携する形で、特にZEHの実績・経験がまだ乏しい中小工務店向けのフォロー策に力を入れる。

 一般の建て主にZEHをどうアピールするか──。この点で近年、「健康面の効果」が重要なキーワードに浮上してきた。高血圧などに伴う疾病リスクの低減や、「健康寿命」「脳年齢」への貢献といった視点で、裏付けデータを収集する調査・研究が活発だ。伊香賀俊治・慶応義塾大学理工学部教授らによる研究が知られている〔写真2〕。国もこうした研究を後押ししており、「医療費や社会保障費の抑制につながる健康政策の1つ」という位置付けを際立たせている。

〔写真2〕伊香賀教授らの研究を基に、慶応義塾大学と横浜市、建材流通・住宅会社のナイスが設けた施設「スマートウェルネス体感パビリオン」(撮影:慶応義塾大学)
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 他方、ZEBは17年前半、設計ガイドラインや「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)に則した計算プログラムが複数の用途別に公開された。皮切りの対象は中規模・小規模事務所、老人・福祉ホーム、スーパーマーケットで、ZEH・ZEBの執行団体である環境共創イニシアチブのウェブサイトからダウンロードできる。

 17年には普及の先導役として「ZEBプランナー」(設計者などのつくり手対象)や「ZEBリーディング・オーナー」(建築物のオーナー対象)の登録制度も始まり、同年末には経産省がZEB普及の“旗印”としてロゴマークを公表。ZEHを追う格好で、ZEBの普及促進も18年度以降、加速するとみられる。

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