軽いのに強い。そんな高機能の新素材を積極的に採り入れた建築が増えている。その理由の1つが、コンピュテーショナル・デザインの普及だ。連載第6回は、4月9日発行予定の書籍「キーワードでわかる 都市・建築2.0」から、新素材に関する10の注目キーワードを取り上げる。

 「欧米やアジアでは複雑なデザインの建物を実現するため、強度を持ちながら、自由に成形できる素材の需要が高まっている」と、金沢工業大学革新複合材料研究開発センター(ICC)の鵜澤潔所長は言う。例えば金属よりも軽く、高い強度を持つ素材として注目されるのがCFRPだ。

 オフィスや住宅などで進むIoT(モノのインターネット)化も、新素材の導入を早めている。IoT技術などと連動する機能をガラスに持たせようと、ガラスメーカー最大手のAGC旭硝子は2018年、交流できる窓ガラスや、IoT調光ガラスなどを販売する。また、安全性を追求するため、形状記憶合金×自己修復コンクリートや、木材×金属のハイブリッド木材など既存素材を掛け合わせた新技術もある。

 建築産業は、自動車産業などと比べて新素材の普及が遅いといわれてきた。だが今後は、情報技術の急速な進化に呼応するように、建築もスピードを高めてハイテク素材に挑んでいかなければならないだろう。

CFRP(炭素繊維強化プラスチック)─JIS化で建材利用の普及に弾み

〔写真1〕米国カリフォルニア州のクパチーノ市でアップルが建設した「スティーブ・ジョブズ・シアター」。エントランス部の円形屋根でCFRPを使い、高さ約6m、直径約50mの円筒状ガラスだけで支えている。設計はフォスター・アンド・パートナーズ(撮影:新華社/アフロ)
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 米アップル社は2017年9月、新製品の発表とともに、新築したばかりの「スティーブ・ジョブズ・シアター」をメディアに披露した。直径約50mのエントランスには柱がなく、外周の曲面ガラスだけで屋根を支えている。薄さと軽さを印象付けるその屋根材には、CFRPが使われた〔写真1〕。

 樹脂などのプラスチックを繊維で強化したものがFRP(繊維強化プラスチック)だ。その強化材に炭素繊維を用いたものをCFRPという。鉄材などと比べて軽く、強度が高い。さびないという特長もある。

 CFRPはこれまで熱硬化性樹脂を使ったものが飛行機などに使われてきた。しかし製造に時間やコストがかかり、建材には向かなかった。

 現在、金沢工業大学革新複合材料研究開発センター(ICC)では、CFRPに熱可塑性樹脂を使い、高速で連続して製造・加工できるプロセスを研究開発している。成功すれば製造時間を数倍~10倍に高速化できる。コストも大幅に下げられ、建材として使える可能性が出てくる。

 ロープ状にして施工性を高めた製品も登場した。小松精練(石川県能美市)とICCが共同開発した「カボコーマ・ストランドロッド」だ。炭素繊維をガラス繊維で被覆してより合わせ、熱可塑性樹脂を含侵させた。18年をめどに耐震補強材としてJIS(日本工業規格)化される見込みだ。

CNF(セルロースナノファイバー)─サッシ枠や塗料に可能性

 2020年までに量産化、30年に1兆円市場へ成長するといわれる新素材がある。政府主導の下、産官学で急速に開発が進んでいるCNFだ。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上の強度を持つ。単体よりも基材に混ぜて使われることが多い。

 紙パルプを原料とするCNFで、国内最大級の生産能力を持つのが日本製紙だ。同社研究開発本部CNF研究所の河崎雅行所長は、「軽くて熱膨張が少ない特性を生かし、建材では樹脂サッシなどに使える」と話す。動かすと粘度が下がり、静置すると粘度が上がるので、液だれしにくい塗料へのニーズもありそうだ。

 一方、竹由来のCNFを住宅・建材分野に展開する動きもある。鹿児島県薩摩川内市は、日建ハウジングシステムやLIXIL R&Dセンターなどと協定を結び、樹脂サッシなどを開発して市営住宅に導入していく。

ETFE(熱可塑性フッ素樹脂)─軽くて透明な膜屋根材

 欧米ではスタジアムの屋根などに多用されているETFE。透明性が高く、ガラスなどと比べて極めて軽い。2枚重ねて間に空気層を挟むと、ガラスと同等の断熱性能を発揮する。

 国内は2016年6月の建築基準法施行令の改正により、一定条件の下で、屋根材に使用できるようになった。「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」(東京・豊洲)のほか、車寄せの屋根など採用例が増えつつある。

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